大型トラックの頭に付いていた「三つ目のランプ」! 義務化廃止とはいえトラック乗りからは重宝されていた装備がなぜ消えたのか?

この記事をまとめると

■かつてよく目にしたトラックのキャビンの上にあった3連のランプ

■速度表示灯というもので2001年まで装着が義務づけられていた

■装着義務が廃止になった理由を考察

2001年に装着義務が廃止された

 キャビンの頭上に「三つ目」のような3連の緑ランプを灯らせて走る、大型トラック。昭和の時代では当たり前のように見かけた光景だったが、近年では余程のことがない限り見ることはできない。一体、あの緑のランプはなんだったのだろうか。そしてなぜなくなったのだろうか。

「三つ目」の正体は、速度表示灯と呼ばれるもの。かつては日本の大型トラックに義務付けされていた灯火装置で、自動車保安部品の一種だった。正面から見て(遠目から)すぐに大型トラックだと判断でき、かつ安全のためその速度が確認できるようになっていたのだ。

 速度表示灯は、3つでワンセットとなる。時速40km/h以下であれば正面から見て左側のひとつ、40〜60km/hであれば左右のふたつ、60km/h以上であれば3つすべてが点灯するという構造になっていた。この速度表示灯の装着は1967年に制定されたが、2001年の保安基準の一部改正に伴い、装着義務が廃止になった。それから徐々に姿を消してゆくことになるのだが、2003年には時速90kmを上限とするスピードリミッターが大型トラックに義務付けされるようになった。

 この、安全のために設定されていたはずの速度表示灯が、なぜ廃止されなければならなかったのか。大型トラックが離合(すれ違い)できないような夜間の狭い道路であっても、速度表示灯があれば対向から大型トラックが来たということが認識できるため、実際、大型ドライバーにも速度表示灯は重宝されていた。大したデメリットなど存在しないように感じるのだが、一体どのような理由で速度表示灯が不要なものだと判断されたのだろう。

 そんな疑問をたどってみると、どうやら輸入トラックの存在が要因になったようだ。速度表示灯は日本のみの装備であるため、外国製のトラックには装着されていない。つまり、外国製のトラックを日本に輸入した場合、別途速度表示灯を取り付けなくてはならなかったのだ。速度表示灯を追加しなければ日本の保安基準に適合せず、公道を走る認可が降りなかったのである。

 もちろん諸説あるが、なにかと外国からの圧力に弱い日本のお偉方だけに、輸入車の問題がもっとも大きかったであろうことは、想像に難くない。そうして、大型トラックの速度表示灯は姿を消したのだ。

 文明の発達に伴い、いろいろな事柄が便利になるというのは世の常である。それを扱う我々も、便利になるのだから大歓迎だし普及するわけだ。しかし、大型トラックの速度表示灯に対してはいまいち腑に落ちない部分がある。廃止されたことで喜んだ人たちは、きっと少数派だったのではないだろうか。国内で「狭い道路がどんどん拡幅され役割が終わった」からとは思えない。

 ことほど左様に時折、意味がわからない改革が行われる我が国、日本。いわゆる先進国であるがゆえ、発展してゆくためには紆余曲折がつきものなのだろう。「三つ目」の移り変わりを思い出すと、そんなことを改めて感じさせられてしまう。


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