この記事をまとめると
■エンジンを2基搭載しているトラックがある
■冷蔵車や冷凍車は冷凍機のコンプレッサー用にサブエンジンを採用していることがある
■サブエンジンの仕組みやメリット・デメリットを解説
サブエンジンで冷凍機のコンプレッサーを駆動
トラックは荷物を運ぶだけでなく、積み下ろしや移動中の温度管理など、走る以外に動力を使う仕様が珍しくない。そのため、パワートレインにはエンジンの駆動力を取り出す機構が備わっているトラックも多い。それがPTO(パワーテイクオフ)といわれるもの。レッカー車やユニック車などはもちろんのこと、セーフティローダー(1台積みの車両運搬車で、荷台が後方にスライドする)など、PTOを利用して荷台部分を動かしたり、発電機や油圧ポンプを駆動している特装車は数多い。
しかし、作業をするためだけにトラックのエンジンを動かしていなければならないのは、状況によっては効率が悪い。油圧や電気を作るだけで、大きなエンジンをアイドリングさせるのは燃費の低下につながるのだ。そのため、冷蔵車や冷凍車では冷気を作るため冷凍機のコンプレッサー駆動のためにサブのエンジンを搭載しているトラックもある。停車中も低温をキープするためにサブエンジンを動かしており、そのぶん温度管理もしやすい。
意外に思われるかもしれないが、エンジンが冷凍機を駆動する直結方式よりもサブエンジン方式のほうが庫内の冷凍能力は高い。大型トラックでは積載能力が高いため、車両総重量が重くなるので走行に使うエンジンの駆動力が必要なため、冷凍機のほうにあまり駆動力を割り当てられないのである。
つまり、トラックによってはエンジンを2基搭載しているものもあるのだ。乗用車の世界では前後にエンジンを搭載したチューニングカーも存在するが、トラックのツインエンジンはあくまで仕事を分担しあった構造なのである。ただし、サブエンジンを搭載すると、そのぶんだけ重くなるので、積載重量の点では不利だ。
また、トレーラーでは冷凍コンテナを積んで運ぶ場合もあるし、冷蔵/冷凍車のトレーラーもある。こうした仕様や、フェリーに載せるトラックでは、船上でエンジンを動かし続けられないので、電動コンプレッサーを搭載している。ハイブリッドトラックのなかには、冷凍機をモーターで駆動する車種もある。これは回生エネルギー(ブレーキで減速する代わりに、発電で運動エネルギーを回収)で発電することにより、エンジンの駆動力を必要とせず冷凍機を駆動できるので、燃費やパワーロスの軽減になる。
最近はエアコンも電動コンプレッサーとサブバッテリーを搭載することで、アイドリングせずに冷暖房を利用するシステムも用意されている。高速道路のSA/PAは、トラックドライバーにとって憩いの場所であると同時に、一般のドライバーにとっても、休憩したり仮眠するスポットでもある。そこでガラガラとアイドリングを続けるトラックは、他のドライバーにとっては迷惑な存在であるし、高い燃料を無駄遣いすると運送会社にとってコスト増大の原因にもなってしまう。また、荷待ちなどで長時間の駐車をしなければならない場合も、空調のためにアイドリングを続けるのは燃料の浪費となるため、電動のエアコン装備が進むだろう。
今後はサブバッテリーとモーターを組み合わせた補助的なパワーユニットが色々なトラックに搭載されることも増えそうだ。