この記事をまとめると
■キャビンとボディの間にクレーンを装備するトラックが存在
■そうしたトラックは「ユニック」と呼ばれることが多い
■ユニックはもともと共栄開発のクレーンシステムの名称だった
ユニックは共栄開発のクレーンシステムの名称だった
トラックのなかにはキャビンとボディの間にクレーンを装備しているタイプもある。これを通称「ユニック車」、「ユニック」と呼ぶことが多い。ユニック車は、重量物や大きくまとめられた荷物の積み降ろしをとてもラクにできるので、資材を運ぶ建築関係だけでなく物流関係でも広く使われている。
ところでユニックという名称は、共栄開発(後にユニックに改名、現在は古河ユニック)という企業が開発した車両や船舶などに取り付けできるクレーンシステムのことで、本来は古河ユニックの製品だけが使える(商標登録している)ものだ。もともとはフランスにあるUNICという自動車メーカー(現在はIVECOの一部門)と共栄開発が提携していたのが由来らしい。
しかし、この便利すぎる機能はほかのクレーンや重機メーカーにも需要をもたらし、さまざまなメーカーがこの「クレーン付きトラック」を販売するようになった。それでも第一人者でありシェアも大きい古河ユニックのユニック車が多く使われるため、ユニック車が通称名になってしまったのだ。接着剤をセメダイン、絆創膏をバンドエイドと呼ぶ人も多いことだろう、それと同じ慣例だ。
ちなみにタダノのクレーン付きトラックは「カーゴクレーン」という商品名があり、新明和工業では「CBクレーン」と呼んでいる。車両の形状から呼ぶ正式名称は「搭載型トラッククレーン(トラック搭載型クレーン)」となる。
実際にはトラックのサイズや積載量などによって対応するためのクレーンの性能(吊り下げ能力やブームの長さなど)が異なり、単純にクレーンだけを追加したものと、吊り下げ時に車体を安定させるアウトリガーを備えたタイプなど、構造にもいろいろと種類がある。
古河ユニックはさまざまなクレーンを製造販売する企業で、タダノも同じだが、新明和工業は元々戦闘機を作っていた(前身は川西航空機。現在も飛行艇や航空機部品を開発・製造している)だけに、幅広い分野で高度な技術を誇っている。KATOのロゴで知られる加藤製作所は建設用の重機や特装車も手がけるなかに、トラックにクレーンを取り付けた商品もラインアップしている。全体として搭載型のトラッククレーンにはさまざまなバリエーションが用意されている。
その他のトラック架装メーカーも注文に応じて製作する特装車にはクレーンを追加することもできる。その場合はクレーンメーカーの搭載型トラッククレーンをOEM供給してもらって搭載することになる場合が多い。ユニック車が通称名として普及したのは、それだけ便利で高い信頼性も認められているということだ。
ちなみに、ショベルカーのことはユンボと呼ぶが、これは1950年代に日本に輸入されたフランスのシカム社製の油圧ショベルがユンボという名称だったことに由来する。1961年に三菱重工がシカム社と技術提携して、生産する油圧ショベルにもユンボの名称が使われたのも、呼び名が広まった理由だったようだ。
イタリアやフランスでは奇想天外なアイディアが生まれるが、それを実用性や信頼性を高めたのが日本のメーカー。乗用車の世界でも起こってきたことがトラックや重機でも行われてきたのだ。