この記事をまとめると
■トラックドライバーが使う道具に「ゲタ」と呼ばれるものがある
■「ゲタ」とはトラックを乗せるいわゆるスロープ台のこと
■「ゲタ」を使用するには手間と技術が必要だ
おもに冷凍車が荷物を降ろす際に活用
世の中にはたくさんの業種が存在しているが、それぞれには必ず専門の道具や言葉がつきまとう。なかでも職人の世界はその傾向が強く、素人には何に使うものなのか見当すらつかないような、謎の道具や工具が存在するのだ。
しかし、そのような道具ほど、プロにとっては必需品であるのも事実。それはトラックドライバーの世界でも同じで、重量物を運ぶ平ボディや残土を運ぶダンプ、食品を運ぶ箱型のトラックなど、それぞれに専用の道具が存在する。ここでは過去に大型トラックのハンドルを握っていた筆者が、ゲタと呼ばれる謎の道具について解説しよう。
先に答えをいえば「ゲタ」とは、いわゆるスロープ台のこと。おもに冷凍車が荷物を降ろす際に活用するもので、トラックのフロントタイヤにかますのである。
トラックはもともとやや前傾姿勢になっている。これは直進時の安定性を求めたものだが、冷凍車の荷物を降ろすのはもちろん車体後部の扉から。それゆえ荷物を降ろす際には上り坂のような状態になってしまうのだ。それを避けるためにゲタをかませてフロントタイヤを持ち上げ、車体の後部が下がるようにするのである。そうすることでジョルダーやパレットローラーといった専門の道具が使いやすくなるわけだ。
ただし、そんなゲタを使うためにはそれなりの技術が要求される。車体の後部をバース(開口部が限られる扉のある荷降ろし場)やホームと呼ばれる場所に、前後左右きっちりと接車しなければならない場合には、面倒ともいえる段取りが必要となる。
まずは、正規の状態でバースにトラックを接車させる。その状態でゲタをフロントタイヤの横に置き、場所を確定。そしてトラックを前方へと移動させ、フロントタイヤの位置に置いたゲタをタイヤが乗る場所に移動させる。そして車体をバックさせ、ゲタに乗せるという段取りだ。言葉にすれば簡単に思えるかもしれないが、その都度車高のあるトラックの運転席を乗り降りしなければならないし、ゲタの微妙な移動調整も必要となる。もちろんゲタはトラックを乗せるためのものであるため、軽いものではない。
しかし、そんなゲタも数が減りつつある。近年では車高を調整できるエアサス車が主流となってきたことで、ゲタを使う必要性が減ってきたのだ。ドライバー不足解消にもつながる改善のひとつだろう。それでも板バネ車にこだわる重量物輸送メインのドライバーは、一定数存在する。
もはや過去の産物となりつつあるゲタだが、洗車やメンテナンス時にも活用できるアイテムでもあるため、覚えておいて損はないだろう。