現役トップレーシングドライバーが母校で講演! 山本尚貴選手が小学生&高校生を相手に「レースの世界」を語った (2/2ページ)

レーサーになれたのは高校のおかげ!?

 さて。第一線で活躍する現役レーサーの山本選手だが、「なぜ作新学院なのか?」という点について少し触れよう。

 山本選手は、ご存じの方も多いかもしれないが、栃木県宇都宮市出身だ。幼少期に鈴鹿サーキットでF1の日本GPを見たことにより、「レーサーになりたい!」と思うようになり、6歳からレーシングカートに乗り始め、その後はホンダが主催する鈴鹿のフォーミュラスクールにて成績優秀者としてスカラシップを受け、その後もレースで活躍し、現在に至る。

※画像はイメージ

「6歳からカート」に乗って活動してきたので、歳を重ねるごとに学校生活との弊害が出てくることがある。山本選手の場合、中学から高校の時期は、海外シリーズにも足を踏み入れていたこともあり、「高校に通いつつ、レース活動もできる学校はないか」となった。

 しかし、「レースに出るので学校休みます!」は、いまでもそうだが、まぁなかなか通用しない。野球やサッカーはよしでも、同じスポーツのカートに対する理解のある学校は、いま以上に少なく、皆無ともいえる状況だった。

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 と、ここで奇跡が起こる。当時、作新学院で教員を務めていた川上先生(のちに山本選手の恩師で現教頭)は、趣味でカートに乗る根っからのクルマ好き。そんな先生は、「栃木に凄い奴がいる」と目をつけていたそうだ。そんなこともあり、「レースに参戦するお前の学校生活の面倒を見てやる」となり、作新学院に通うようになったそうだ。

 なので、作新学院高等学校はまさに山本選手の人生の恩人的な存在なのだ。そんな特別な学校ということもあり、今回で3回目となるこの母校訪問は、学校側からの要請ではなく、山本選手側から、「児童生徒に自身の体験を話して、夢や希望を与えたいです」という提案で実現したそう。

 今回は、30人ほどの生徒が通う、「情報科学部自動車整備士養成科」にて、山本選手が走る64号車のNAKAJIMA RACINGでメカニックを務める浅見さんが登壇。

「僕は速いクルマの整備に関わりたいという夢をもって、専門の学校を卒業してこの世界に飛び込みました。ちなみに300km/hで走るクルマなのにもかかわらず、僕は整備士免許はもっていません。極論、なくてもなれます。必要なのは『情熱』、『勝ちたい』という信念が必要です。これは、どの世界でも必要かなと。レースの場合、朝早くて夜遅いですが、好きなことなので楽しいです!」と、山本選手も交えながら浅見さんは、レースメカニックの醍醐味を熱く語ってくれた。

 質疑応答では、高校生から「集中力が途切れることが多いのですが、レース中、山本選手はどうしてますか?」と、実戦的な質問。

 山本選手は、「まずは基礎体力をつけることですね。あとは、ちゃんとオフの時間を作ること。人間、2時間も3時間も集中できませんから。そのオフの時間を上手に過ごして、私生活にメリハリをつけるといいと思いますよ」とアドバイス。

 これは、誰にでも活かせる話ではないだろうか。

 浅見さんに向けては、「普段メカニックはどんな練習をしてますか?」という質問が出た。これに対して浅見さんは、「これも集中力が必要ですが、普段できることは限られているので、重作業などに備えて基礎体力作りや筋トレが必要」という、リアルな返答を得た。

 このほかに、「レーサーになるにはどうすればいいですか?」という質問に対して、山本選手は「クルマのパーツや役割などをもっと勉強しておけばよかったなと。そうでないと、メカニックに自分の伝えたいことが伝えられないこともあるので、勝つためのセッティングを知る上で必要ですね。あとは、メカニックの大変さも理解してあげられるようにしておいてください」と語った。

 山本選手は最後に、「ここでクルマの勉強をして、将来僕のクルマのメンテナンスをしてくれる人とか出てきたら、とても嬉しいと思います」と締め括り、ここでも誕生日サプライズを受け、2部に渡る講演会が幕を閉じた。

 講演を聞いて、生徒からは、「山本選手は1番リスペクトしている選手のひとりです。レースの世界で戦う人からの声を聞いて、もっとしっかりした人間になれるよう頑張ろうと思います」との声が。さらに、「レースメカニックを目指しているので、今回の浅見さんの話を聞いて、基礎体力作りなどをしていき、将来に役立てたいなと思ってます」と話した生徒もいた。

 講演の後、児童や学生とは山本選手や浅見さんと語り合ったり、握手をするなど、触れ合う光景もありとても和気藹々とした雰囲気だったのも印象的だった。

 山本選手はわれわれメディアに対しては、「このなかでひとりでも多くの人が自動車業界に残ってくれると嬉しいですね。また、レース現場にいるわれわれは、どのようにレースに興味をもってくれるか、若手育成を含めて入口を広げる活動が大切かなと考えています。意外と下(若い人)がいないなと感じてますので……。そうなると、ドライバーが走れないし、レースが成り立たないんですよね。とりあえずいまは、レースを走って、楽しさを広げられたらと思ってます」と語った。

 ちなみにせっかくの機会なので、山本選手に筆者も質問してみた。それが、「作新学院の3年間、何が楽しかったですか? 思い出がありましたか?」という個人的にちょっと気になった内容。

 これに対し、「学生生活……思い出あんまりないですね(笑)。学校行事もいろいろ被ってたので、学校帰りに買い食いとかカラオケとか行けなかったですね……。学校が終わったら自転車で1時間かけてジムに通ってるか、レースを走るかでした。ちなみに部活は一応陸上部の所属で、中長距離が少し得意でした」と、いままでに聞いたことがない意外な話が。

 なお、学生時代よりいまのほうが高校時代の友達と遊ぶことが多いそうだ。

「文字どおり、文武両道なのが作新学院なので、進学に悩んでる人はぜひ作新へ(笑)」とのメッセージもあった。

 そんな山本選手は、8月24日(土)〜25日(日)に、地元栃木県のモビリティリゾートもてぎにて行われる、スーパーフォーミュラ第5戦に同校の小学生児童約400人と情報科学部自動車整備士養成科の学生約30人を招待している。

 8月のもてぎは、山本選手と作新学院の児童・生徒たちの熱い走りと応援が見逃せない!


WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

編集者

愛車
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