この記事をまとめると
■エンジン車は長期間乗らないと潤滑系などに悪影響が出るといわれている
■EVでは潤滑部品が少ないので放っておいても不具合が起こる可能性が低い
■EVは保守点検や整備にそれほどコストがかからないと考えらえる
EVは長期間放置しても平気?
エンジン車に長い期間乗らない場合、たまにエンジンをかけ、アイドリングさせて潤滑油を循環させるのがよいとされてきた。あるいは、前後左右、あまり傾けた状態で駐車すると、やはりエンジンの潤滑油が偏り、始動する際に潤滑が不十分な箇所が生じるといった懸念が指摘されてきた。ほかにも、長期保管が予定される際には、補器用の12V(ボルト)バッテリーの端子を外しておくと、再度使用する際のバッテリー上がりを予防できるというのは、広く知られるところだ。
それらの予備知識がないと、いざクルマが必要なときに余計な手間や余分な時間を要することになりかねない。
では、電気自動車(EV)はどうか?
EVは、エンジンのような潤滑が必要な部品が限られる。せいぜい、減速歯車や差動装置(デファレンシャル)くらいだろう。それらは、エンジンの潤滑より粘度の高い油が使われており、長期間の保存でもそれほど心配ないのではないか。原動機のモーターも回転する軸受けには潤滑が必要だが、エンジンのような摺動部分の潤滑ほど神経質である必要はないだろう。
その昔、米国ヘンリー・フォードの夫人クララは、EVを愛用したと伝えられる。1959年製の愛車を60年ぶりに動かす際、放電しきった駆動用バッテリー(当時は鉛酸式)を交換するだけで、あとは手つかずに走ったと伝えられる。それほどEVは、保守管理が難しくないという一例だ。
それでも、唯一気がかりなのは、補器用12Vバッテリーの放電だ。それに関して、たとえば日産やトヨタのEVは、12Vバッテリーの電圧が下がると自動的に駆動用の高電圧バッテリーから補充し、いわゆるバッテリー上がりをしない制御が組み込まれている。もちろん、室内灯などのつけっぱなしは要注意だが、基本的にはバッテリー上がりで始動できないことがないよう配慮されている。
ちなみに、米国テスラは、12Vの鉛酸バッテリーではなく、16Vのリチウムイオンバッテリーを採用することで、基本的にバッテリー交換も不要にしているという。
一方、海外のEVでは、12Vバッテリーへの補充電の制御を備えるメーカーと、備えていない、あるいは不明というメーカーがある。日本に比べ海外では、必ずしも公共交通機関が網羅されているわけではなく、車格の上下を問わずクルマが日々に不可欠な移動手段となっているため、長期間駐車場に置きっぱなしという事例が限定的だからではないか。
今回は、長期保管の際の話ではあるが、一事が万事というように、EVは、日常的な保守点検や整備に手間が少なく、安上がりに所持できるクルマである。