走りが楽しいモデルもたくさんあった
さて、フィアット500にはさまざまなファミリーモデルも誕生しています。まず2009年4月に登場したのは、蠍のエンブレムがアイコンとなっているカルロ・アバルト率いるチューニングメーカー、アバルトによるハイパフォーマンスモデル、アバルト500。5速MTモデルで、パワフルな走りが魅力的でした。
2010年8月には待望の5速MTモデル「1.2 スポーツMT」が登場。既存の2ペダルMTモデル同様、アイドリングストップ機構「スタート&ストップシステム」が搭載されていました。続いて2010年10月に登場したのは、電動ソフトトップモデルのアバルト500C。こちらは2ペダルMTが採用されています。
2010年11月からオーダー開始されたのは、アバルトとフェラーリというイタリアを代表する伝統のブランドがコラボした「アバルト695トリブートフェラーリ」。これは当時、アバルト史上最速の500と呼ばれ、世界で1700台の限定生産、日本では限定150台となっています。
2011年になると、ついにフィアットの大発明ともいうべき2気筒の「ツインエア」エンジンがフィアット500に搭載されます。同出力の4気筒エンジンよりも23%コンパクト、10%軽くなり、CO2排出量を30%削減しているのが特徴。これによってフィアット500のグレードは、1.2、1.4、TwinAirの3つとなっています。
2015年にはクロスオーバーSUVである500Xが登場。デザインは500のイメージを踏襲していますが、兄弟車がジープ・レネゲードであることからタフな一面もあり、エンジンは全車1.4リッターですが、FFモデルは6速DCT、4WDは9速ATを組み合わせています。
また、2012年のジュネーブショーで世界初公開された500LというコンパクトMPVがあるのですが、残念ながら日本未導入。ベースがフィアット・プントで、クロスオーバーテイストのデザインをまとうフィアット500Lクロス、精悍さを強調した500Lスポーツ、3列7人乗り仕様の500Lワゴンもありました。
そして2022年に登場したのが、フィアット初のBEVとなった500eと500eオープンです。その後、アバルト初のBEVとなるアバルト500eのハッチバックとカブリオレもデビュー。それまで電動化モデルに嫌悪感を持っていた人でさえ、この500eシリーズに乗ると「楽しい」と思わず笑みが漏れるような世界観が特徴で、フィアット500が積み上げてきた伝統は、しっかり継承されていくのではないかと感じさせてくれます。
今回、フィアット500は日本で築いてきた16年の歴史に幕をおろすことになりましたが、それもステランティス全体の電動化戦略によるところが大きいといいます。寂しいですが、これからは500eがこの世界観を引っ張っていってくれることを願います。ありがとう、フィアット500!