いま一番ホットなライバル対決! ホンダ・フリード対トヨタ・シエンタを「シート・荷室・走り・燃費・装備」とあらゆる点で比較した (2/2ページ)

ミニバンにとって最重要な後席の快適性もフリード有利

 ミニバンの特等席といえば2列目席。しかし以前のコンパクトミニバンは、エアコンが前席にしかついておらず、暑い日の後席空調環境は厳しかったといわざるを得ない。現行シエンタでは、軽自動車の採用例もあるリヤサーキュレーターを天井に用意(ZとGにオプション)。

 しかし、新型フリードはその先をいく。そう、クラス初、フリード初のリヤクーラーをエアーのEXグレード、クロスターの3列シートに標準装備したのである! つまり、後席でもより涼しく過ごせるようになるわけだ。後席に乗る暑がりの人、1年中毛皮を着ている愛犬にとって、これは嬉しすぎる快適性のポイントとなる。

 ここで、ミニバンの快適性にかかわる、新型フリード、シエンタ3列シートの後席居住スペースの独自ツールによる実測値を紹介したい。いずれも身長172cm、体重65kgの筆者のドライビングポジションが基準である。

 まず、シエンタは2列目席頭上に220mm、膝まわりに最大260mm(スライド後端位置)、3列目席頭上に70mm、膝まわりに0~40mm(2列目席膝まわりを100mmにセット)のスペースがある。

 一方、新型フリードは2列目席頭上に230mm、膝まわりに最大360mm(6人乗り、2列目キャプテンシートのスライド後端位置)、3列目席頭上に130mm、膝まわりに0~80mm(列目席膝まわりを130mmにセット)というスペースの余裕がある。

 そんな寸法の差もさることながら、シートのかけ心地でも、新型フリードが、キャプテン、ベンチシートともに優位に立つ。フリードは1列目席(ステップワゴンのシート骨格を用いる)、2列目席ともに分厚いクッション感、ソファ的なソフトで心地よい、乗り心地のよさにも影響するかけ心地が素晴らしい。

 一方、シエンタは1列目席こそ快適なかけ心地だが、2列目ベンチシートは平板で硬めのかけ心地となり、その差は大きい。

 しかも、フリードは2列目キャプテンシートを用意するとともに、3列目席のシートサイズもたっぷり。具体的には、フリードは座面長425mm、シート幅575×2=1150mm、シートバック高480mm。シートのクッション感もなかなかだ。シエンタは座面長420mm、シート幅445×2=890mm、シートバック高500mmと、シートアレンジの制約から、とくに横幅が狭い3列目席となる。

 ただし、着座、立ち上がり性にかかわるフロアからシート座面前端までの高さ=ヒール段差はシエンタ330mm、フリード260mm(先代からシート先端で20mm減少。シートの薄型化、格納のしやすさのため。頭上方向の余裕もこのシートレイアウトのため)。ひとり乗車であれば、シエンタのほうが座りやすく、立ち上がりやすいと感じるかも知れない(いずれにしても狭いシートではある)。

 では、ラゲッジルームについても比較してみたい。3列シートモデルでは、新型フリードは開口部地上高460mm(FF)、フロア奥行3列目席使用時240mm~3列目席格納時990mm、フロア幅930~970mm。最小フロア高1140mm。

 シエンタは開口部地上高505mm(FF)、フロア奥行3列目席使用時310mm~3列目席格納時860mm、フロア幅1105mm。最小フロア高1105mm。重い荷物の出し入れ性にかかわる開口部地上高の低さと3列目席格納時の奥行、最小フロア高で有利なのはフリードだ。

 ちなみに、フリードクロスター、シエンタに用意される2列シート5人乗り仕様のラゲッジルームはといえば、荷室を上下2段に仕切れるユーティリティボードが”標準装備”されるクロスターが開口部地上高320mm(FF)、フロア奥行ボード上段885mm、ボード下段1000mm、最大フロア幅1270mm。フロア高ボード上段885mm、ボード下段1130mm。さらに後席をダブルフォールダウン格納した際の、フラットなフロア長は1840mmに達し、車中泊にも適する(先代のフリード+同様、ニトリの折り畳みマットレスがジャストフィット)。

 クロスター5人乗り仕様の開口部地上高が極端に低いのは、車椅子の使用だけでなく、アウトドア用のキャリーカートの積載にも活躍してくれるスロープ仕様と共通だからである。

 一方、シエンタの2列シートモデルは、開口部地上高565mm、フロア長840mm、フロア幅1265mm、フロア高1055mm、後席格納時のフロア長1670mm。フリードクロスターの2列シートモデルに標準装備されるユーティリティボードはシエンタではラゲージアッパーボードセット4万1800円のオプションとなる。※フロア長は最大荷室長とは異なる

 最後に、両車の試乗経験に基づく走行性能の違いだが、エンジンの3気筒、4気筒の差、ハイブリッド車同士のモーター出力の大小もあり、よりスムースで全席で静かに走り、乗り心地が上質で、あらゆる挙動がリニアで、とくにミニバンにとって重要な2/3列目席の快適性(キャプテンシートの有無とリヤクーラーの装備が大きい)、全列のシートのかけ心地のよさでリードするのは新型フリードだと思えた。

 ただ、シエンタ・ハイブリッドのEV走行の粘り強さ、繰り返すけれどプロアクティブドライビングアシスト(PDA)の安心感は大いに評価できる。また、車中泊のしやすさでも、ユーティリティボードが標準装備され、”フロア長”に余裕があるフリード・クロスターの2列5人乗りが好ましい。

 シエンタの発売は2022年8月。それから約2年後、ライバルのシエンタを横目で見つつ開発され、満を持して発売された新型フリードなのだから、よく出来ていて当然ともいえるだろう。シエンタに対してやや高めの価格設定も、内容を知れば、納得できるものではないか。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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