40年にわたってフランス国民の”アシ”として活躍
しかし開発は続けられた。特筆すべきは、水冷だった水平対向2気筒エンジンを空冷に、軽量化のためにアルミを使っていた車体をスティールに改めたこと。戦後、人々の生活が困窮すると予想して、コストダウンを優先したのだ。
こうした経緯を経て1948年に発表された2CVは、簡素極まりないボディが「ブリキの缶詰」などと揶揄されたものの、想定ユーザーである地方の農民などからは高い評価を受け、販売台数を伸ばしていく。それに対応するように排気量拡大、装備の充実などが図られていった。
ただし、1960年代後半になると旧さが目立つようになる。そこでシトロエンは、ヘッドライトをフェンダーに埋め込み、ボディサイドに凹凸をつけるなど、自動車らしいデザインをもつディアーヌを送り出し、後継車に位置付けた。
ところがユーザーは、クラシックミニやフォルクスワーゲン・ビートルと同じように、2CVをオンリーワンの存在と考えており、モデルチェンジは不要と声を上げはじめた。
シトロエンはこの声にいち早く反応し、1970年に新設計エンジンを与えると、その後個性的なカラーの特別仕様車を次々に仕立てるようになった。クラシカルな2トーンのチャールストンはその代表といえよう。
僕は生産が終了した1990年頃から数年間愛車にしたあと、取材でも何度か2CVに乗っていて、フンワリした乗り心地はたしかにシトロエンそのものだけれど、演出に頼らず愚直に実用性を追求した姿勢はミシュランに通じるとも思っている。