1度は試乗車に乗ってみるべし!
タントはなんといっても助手席側の大開口となるBピラーレスのミラクルオープンドア、子育て世代にフォーカスした540mmもの運転席ロングスライドによるミラクルウォークスルーパッケージ(運転席の母親が後席の子どもを運転席からケアしやすい)が大きな特徴。
このクラスでいち早く電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能、全車速追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)&コーナリングトレースアシストなどを用意しているのも安心・安全材料だ。
また、タント・ファンクロスという、クロスオーバー感たっぷりの派生車を用意しているのもタントらしさ。いまのところ、N-BOXにはそうしたモデルはなく、スペーシアも先代にあったスペーシア・ギアの新型待ちとなっている。
タントのデビューは2019年7月。2023年後半にデビューした最新のN-BOXとスペーシアに比べて、たとえばインテリアの見映えで大きく劣ることはない。ただし、エクステリアに関しては、カスタム、ファンクロスはいまでも存在感たっぷりだが、標準車のほうは、やや古臭く見えてしまうのは致し方ないところか。
では、走行性能はどうだろう。
車内の静粛性はほぼ同等だが、乗り心地面の快適性と車内の静かさではN-BOXがやや優位。もう、上級車も真っ青な路面を問わない快適かつ静かで上質な乗り心地を示してくれるのだ。一方、スペーシアは一段と高まったボディ剛性によるしっかり感ある乗り味が自慢だが、とくに15インチタイヤを履くカスタムは硬めで、荒れた路面や段差などでの突き上げ感、ショックが気になる人は気になるかも知れない。スペーシアを乗り心地面で選ぶなら14インチタイヤを履くモデルということになるだろうか。
タントの走行性能はNA、ターボを問わない動力性能、すっきりとした操縦性、走りやすさ、乗り心地などの項目でバランスが取れているところが魅力。ただし、意外なことに、14インチタイヤ装着車より、カスタムRSの15インチタイヤのほうがロードノイズを拾いにくく、車内は静か。つまり、14インチタイヤを履くNAモデルの静粛性は、さすがに最新の遮音・吸音技術が盛り込まれ、こだわったN-BOX、スペーシアが上まわることになる。
経済志向で軽自動車を選び、燃費にもこだわる、というならスペーシアだ。スペーシアのパワーユニットは全車マイルドハイブリッドで、NAモデルで最高23.9km/L、カスタムターボでも21.9km/Lを誇る。一方、N-BOXはNAモデルで21.6km/L、カスタムのみになったターボモデルで20.3km/L(NAとターボの燃費差が小さいのは立派)。タントはNAモデルで22.7km/L、カスタムRSのターボモデルが21.2km/L(いずれもFF)となる。
さらに、先進運転支援機能を比較してみると、その基本ともなりうる電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能はN-BOXが全車に搭載、初採用となるスぺーシアは控え目に、カスタムと標準車のセーフティプラスパッケージ装着車のみ装備。タントは標準車のベースグレードL以外に装備される。
ここまでなら、N-BOX優位と思えるのだが、じつは、スペーシアの高速道路で役立つACC(アダプティブクルーズコントロール)には、なんと、ほとんどのACCにない、カーブを認識し、速度を抑制してくれる機能がある! これは高速走行がより快適・安心になるメリット絶大といっていい。なお、高速走行で役立つACCはタントの場合、Lグレードを除いてパックオプションとなる。このあたりはデビューの古さを感じさせるところだ。
こうして最新のN-BOXとスペーシア、そしてタントを比べてみると、後席のリラックス度、使い勝手、燃費性能、ACCの先進度でスペーシアがリード。商品力の高さが際立っている。スペーシアの乗り心地面の評価は、おろしたての新車試乗での印象だから、実際に販売店で試乗してみて、納得できればここでの記述は無視していい(硬めのしっかりとした乗り心地を好む人を含む)。
たしかにN-BOXはこのクラスの圧倒的王者だが、それにスペーシアが新型となって大勝負をかけてきたことは間違いない。N-BOX一択で検討している人も、クルマ選びの視野を広げ、一度、スぺーシアの魅力に触れてみてはどうだろう。子育て世代なら、タントのミラクルオープンドア、ミラクルウォークスルーパッケージに、アウトドア派ならファンクロスに着目するのもいい。
いずれの車種でも、後席の圧巻の広さやシートアレンジ性のよさは、スーパーハイト系軽自動車の特権であり、その点については満足できるに違いないのである。