クラスを超えた静粛性を備えている
ATセレクターはIパターン。Dレンジにシフトして走り始める。発進加速時にはISGのアシストが得られ、力強い。電動車やターボ付き車の高トルクに慣れた身にも力不足を感じさせない。加速を続けると2〜3〜4とスムースにシフトアップしていく。この感覚はCVTと異なりステップ比が心地いいのだ。ここで気がついたのは室内の静かさだ。遮音性に優れていてエンジン音のキャビンへの侵入を抑え込み、また振動も上手く抑制している。
速度が高まってくるとタイヤのロードノイズが若干気になるが、それでも全体的にはクラスを超えた静粛性を備えていると言える。
タイヤはグッドイヤー・トリプルマックス2という聞き慣れない仕様だが、生産国はインドとなっていて国内のアフターマーケットには流通していなさそうだ。トレッドの溝が浅く、ランドシー比の大きそうなハイグリップ系なパターンデザインだ。ロードノイズはタイヤが発生するので、日本の路面にマッチングさせる必要がありそう。
サスペンションはフロント・ストラット、リヤ・トーションビーム式でロールを抑えた操縦性に仕上げている。ハンドリングはライントレース性に優れていて、重厚な走り味。質感の高さが同クラスのライバルに対してアドバンテージが得られている。
次にAWD仕様を試す。AWDといっても高度な電子制御ではなく、プリミティブなビスカスカップリング方式ということで、生活4駆としての役割に徹している。国内の販売店からは4駆の要望が高く、フロンクスのAWDは国内専用モデルとなるようだ。
走り始めるとFFよりも一層質感が高く、またフロア振動も抑えられていて重厚さを増した乗り味となっている。フロアトンネルにプロペラシャフトを通す関係でフロア剛性が高く、またリヤ・サスペンションのトーションビームにもデファレンシャルを抱え込んでいるため足まわりの剛性感もはるかに高い。
結果として快適性、ハンドリング、操縦安定性、トラクションを含め全天候性に優れていて、これは人気を博しそうだ。価格設定次第だが、仕組み的にFFとAWDの価格差を小さくできるだろう。
デザインだけでなく走行性の高さも重視するならAWDがお勧めだが、クラスを超えたデザイン性の高さが魅力なので市街地のユーザーから山間地域までスズキの強力な販売網効果もありフロンクスは全国で見かける機会が増えそうだ。