かつては電卓片手に華麗に見積もり作成がディーラーマンの見せ場! 対面商談すら煩わしく感じるイマドキの世の「新たな見せ場」とは (2/2ページ)

商談にもそろそろ時代にあったまったく新しい見せ場が必要

 たとえばアメリカではセールスマンはそれぞれが間仕切りされた専用スペースをもち、そこで商談することになるので、セールスマンが商談中に端末入力のためなどで中座することはない。日本でも専用スペースを設けているディーラーもあるが、まだまだ限定的。日本ではそもそも道路沿いのショーウインドウに沿って商談テーブルを置くなど、外から見えやすい場所に商談スペース(テーブル)を設けていることがほとんど。通りすがりの人が、「あそこの店は人が多くいる」としてショールームに足を運びやすくさせるという考えがあったようだ。

 アメリカのように、「それじゃ私のスペースへ」とセールスマンに通されれば、何か特別扱いされているようで悪い感じは抱かないはずである。個人的には日本のように愛車をもち込んで点検・整備が終わるのを待つ人と同じ空間で商談をすることには違和感を抱いてしまっている。これもアメリカの例だが、商談スペース及びショールームと点検・整備を待つスペースは建物内でもキッチリわけられており、ディーラーによっては建物はおろか場所すら別になっていることもある。

 まれな話だが、日本では商談に来たのに、点検・整備を待つ人でテーブルが埋まっているといった本末転倒みたいなシチュエーションに遭遇することもある。

 手計算が商談では当たり前だったころには、いまよりもセールスマン個々のパーソナリティを知ることができた。日本では車検制度など厳格な点検・整備制度もあり、そのため購入ディーラーと納車後も担当セールスマンを介して付き合いを続けるケースが多い。ある意味商談という場は、セールスマンとの相性が合うかあわないか(相性が合わなければ値引きなど好条件も引き出しにくい)、「お見合い」の場でもあった。

 セールスマンは店頭で完結せずに、お客の自宅へお邪魔して商談し、お客の生活状況なども確認していたので、まさに商談はお見合い色が強かった。とはいっても、令和のいまに昔のようなお見合い感覚の商談に戻せというつもりはない。それは社会がすでにそのようなものを許容していないからである。

 昔のような手数の多い見せ場のないなか、セールスマンがいかに「セルフプロデュース」してくるのかを見極めようと思っていれば、煩わしさの目立ついまどきの商談も楽しんで受け入れることができるともいえよう。すでに過去に比べれば店頭一発契約のように商談にかける時間は短くなっている。それでも「面倒くさい」と思う気もちは減らないどころか、クルマ以外の買い物に比べれば面倒くさいと感じる人は増えてきている。

 すでに新車購入商談は見せ場が少なくなり、条件交渉に終始することも目立ってきているのが現状である、そして働き手不足も深刻である。

 働き手不足に悩むファミリーレストランでは、テーブル備え付けのタブレットで注文し、ネコ型配膳ロボットが頼んだ食事を持ってくる。そしてセルフレジで会計を済ますことになることも多い。このように激変したサービスであっても、たいした混乱もなくお客はそれを受け入れているが、際立って不満をもっているようにも見えない。そしてネコ型配膳ロボットは、すでに世界中で活躍している。

 新車購入の商談もそろそろ時代にあったまったく新しい見せ場を見せる時期に差しかかっているのではないかと考えている。働き手も足りないなか、いつまでも基本的な部分で「1980年代フォーマット」を継承することはすでに限界にきているように見える。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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