より厳しい基準でテストをした……よりも「虚偽記載」が問題! 国が定めた認証試験は「安全なクルマを大量にユーザーに届ける」ために生まれた制度だとの再認識が必要

この記事をまとめると

■自動車メーカー各社による相次ぐ認証不正が大きな社会問題となっている

■トヨタ・ホンダ・マツダの記者会見では「基準より厳しい内容の社内試験の結果では安全性に問題はない」という表現が使用された

■国土交通省の幹部は「一連の問題は虚偽記載」と断言し「極めて重い処分」という認識をもつよう求めた

国の基準がこれまで軽視されてきたことが一番の問題

 自動車メーカー各社による、認証不正が大きな社会問題となっている。法を守らないことに対して、自動車ユーザーや自動車販売店が自動車メーカーに対する不信感を抱いている。また、新車の出荷停止処分を受けた車種については納期が遅れ、ユーザーに直接的な影響も出ている。

 ここでいう認証不正とは、型式指定の申請に対するもの。本来、国が定める保安基準などについて生産したクルマごとに検査を受ける必要があるが、型式指定の申請における認証を行えばクルマごとの検査の必要はなくなり大量生産がスムースに行える。

 見方を変えれば、それだけ認証には法的な重みがあるということだ。

 こうした認証については、これまで各種の不正行為が発覚している。たとえば、2016年には三菱やスズキが燃費に関する不正、また近年では日野が排ガスに関して長期間かつ各種モデルで多様な不正、そしてダイハツも多種モデルで多様な不正を行っていたことが明らかになった。

 ダイハツの不正を受けて、国は自動車メーカー各社に緊急の社内調査を行うよう要請し、その結果としてトヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機で不正が見つかった。

 トヨタ、ホンダ、マツダはそれぞれ6月3日に記者会見を開いて事情を説明したのだが、ユーザーが気になったのは「法令遵守はできていなかったが、基準より厳しい内容の社内試験の結果では安全性に問題はない」という3社共通の表現だ。

 ダイハツの不正でも同様の説明があったが、これは、自動車メーカーが認証に対してずさんな管理をしてきたことを示すものだといえよう。社内基準と認証の基準が異なっていることを認識していない、または認識していても自社の都合のいい解釈をしていた、ということにほかならないからだ。

 技術論ではなく、ガバナンスにおける大きな欠陥だ。

 こうした点についてつい先日、認証に対する国の窓口である、国土交通省 物流・自動車局の幹部3人と都内で意見交換をした。その際、同局の次長は、一連の問題は「虚偽記載」と言い切った。

 その上で、新車の出荷停止処分が道路運送車両法において「極めて重い処分」という認識をもつよう、自動車メーカーに改めて求めた。

 改善策については、同省で認証不正に関連する有識者会議を実施中で、夏の終わりから秋口を目処に、報告書を公表するという。

 また、認証プロセスについても、不正がしづらい、または不正の抑止に繋がるようなDX(デジタルトランスフォーメーション)についても今年度中を目処に一定の方向性を示すとした。ただし、認証プロセスをDXしても、故意で行う「虚偽記載」は防ぎ切れず、そうした点をしっかりと分けた上で議論を進め、認証に対する総括的な改善策を練っていくことになるとのことだ。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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