【試乗】SUVではないというフェラーリの「いい訳」も乗れば真実に変わる! プロサングエが見せた「あくまでフェラーリ」な世界 (2/2ページ)

フェラーリらしさを保ちながらより快適な走りに

 それにしても、プロサングエというニューモデルは、最初から最後まで快適性に徹したモデルであるように感じる。電動ヒンジの後ろ開きドアをもつ後席へのアクセスはもちろんすばらしく、左右独立式の2シーターとなる後席は、ホールド性が素晴らしいのに加えて個別のリクライニング機能やヒーター、ベンチレーション機能ももつ。その背後にあるのは後席使用時でも473リットルが確保されたラゲッジルーム。

 一方フロントシートまわりの造形も、現代のフェラーリらしく未来的な感覚を抱かせるもので、試乗車には助手席側にも10.2インチサイズのディスプレイさえも装着されていた。

 メーターパネルはフルデジタルのディスプレイだが、こちらもすでにフェラーリのモデルでは、いつしか違和感を覚えることもなくなった。

 フロントミッドシップされる6.5リッターのV型12気筒エンジン、「F140IA」型は、そのスムースさとともにサウンドと振動のレベルが明らかに小さなものになった。これもプロサングエを使うカスタマーの要求を意識したものと考えられる。フェラーリの12気筒エンジンの特長はそのままに、それをいかに快適に車内に取り込むのか。フェラーリはここにプロサングエのエンジンチューニングにおける主眼をおいたように感じられた。

 参考までにこの12気筒エンジンは、最高出力が725馬力、最大トルクは716Nmという性能。エンジン前方に組み合わされたPTU(パワートランスファーユニット)で前輪に、そしてトランスアクスル方式でリヤアクスルに位置する8速DCTで後輪にトルクは伝達される4WDシステムをもつ。

 タイトなコーナーからの脱出時など、PTUの効果には、カスタマーは大いに感動させられるに違いない。そしてこれは、プロサングエのメカニズムで最大の特長といえるのが、4輪の車高をダンパー内の電気モーターによって個別に制御するフェラーリアクティブサスペンションテクノロジー(FAST)の効果だ。

 この技術の心臓部ともいえるのが、トゥルーアクティブスプールバルブ(TASV)。48V電流を用いる電動モーターがストローク調節を行うためのこの機構は、マネッティーノなどと統合制御され、つねに理想的な減衰力を生み出してくれる。

 じっさいに感じるFASTの動きは、じつにスムースで安定したものだった。乗り心地も低速域ではやや硬めの印象を与えるものの、市街地を抜けるとその印象も消え去り、乗り心地はフラットなものに変わる。ステアリングの正確性も、このプロサングエをワインディングにもち込むときには大きなアドバンテージとなるだろう。

 大柄なボディでも、これだけ正確なステアリングがあれば正確なラインをトレースすることは難しくない。もちろんエンジンのレスポンスも魅力的だ。

 SUVではなく、あくまでも新しい姿カタチをしたフェラーリのスポーツカー、プロサングエ。フェラーリにはすでに数年分のオーダーが届いているというが、それも当然のことだろう。話題のフェラーリを新車で買う難しさだけは、このプロサングエも変わらないようだ。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
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