軽三輪トラックのミゼット発売で庶民にも知れ渡った
一般に最初の国産量産車として知られているのは1918年に完成した三菱A型だ。その開発・生産を行ったのは1917年に誕生した三菱造船(現在の三菱重工業)であり、三菱重工業を母体として1970年に生まれたのが三菱自動車工業となっている。もし、そのルーツを1870年に開業した九十九商会や、1873年に岩崎彌太郎氏が社長に就任した三菱商会まで遡るとしたら、日本最古の自動車メーカーは三菱系となりそうなものだが、企業体としての連続性を考えると、ダイハツ工業を最古のメーカーとするのが妥当といえる。
それはさておき、ダイハツというブランドが庶民に広まったのは1957年(昭和32年)に発売された軽三輪トラック「ミゼット」だろう。古きよき昭和時代を象徴するモデルであり、庶民にまでモータリゼーションが広まったことを象徴するモデルとして「ミゼット」は日本の自動車史において欠かせないモデルとなっている。
なお、1951年には発動機製造株式会社はダイハツ工業へと改名されており、ミゼットはまごうことなくダイハツというブランドから生まれたモデルであった。
ちなみに、現在の軽商用車に使われている「ハイゼット」という車名の由来は、ミゼットをハイにした上級版というものであり、ミゼットの魂は令和の現在にも息づいている。
さて、近年はダイハツといえばトヨタの子会社というイメージも強いが、ここまで見てきたように創業は大阪の地であり、完全に独立した企業であった。トヨタの影が見えてくるのは1967年で、このときトヨタ自動車工業およびトヨタ自動車販売(1982年に合併してトヨタ自動車になる)と業務提携をしたのがはじまりだ。
そこからじっくりと時間をかけて関係を深めていき、トヨタがダイハツ株式の過半数を取得して子会社としたのは1998年のこと。ただし、この段階でもダイハツ工業は一般に株式を取引できる上場企業ではあった。トヨタの完全子会社となったのは2016年夏のこと、同時期にダイハツは上場廃止となっている。
というわけで、1907年に誕生した日本最古の自動車メーカーであるダイハツは、法人として続いていることは間違いないが、もはや独立した企業とはいい難い状況になっているという見方もできる。その長い歴史に敬意を示して「ダイハツ」というブランドが長く続くことを祈るばかりだ。