強気の価格設定と微妙な立ち位置で結果は残念! 小さなセルシオとして贅の限りを尽くした「トヨタ・ブレビス」がいまみても衝撃作だった (2/2ページ)

敗因は中途半端な立ち位置

 エクステリアだけでなく、インテリアも、いわばフツーだったプログレとは異なり、当時としてはかなり高級な仕立てで、オプティトロンメーター、本アルミをあしらったセンタークラスター、オーディオパネル、ゲート式シフトセレクターが奢られている。なお、ウォルナットパッケージのオプションでは、当時、センチュリーとセルシオだけに採用されていた本木目パネルが使われていたほど。クラウンでも”木目調”パネルだったのだ。

 装備にしても、エレクトロマルチビジョン、レーダークルーズコントロール、本革シート、パワーシート、ムーンルーフ、電動リヤサンシェード、ヒーター付きレインクリアリングドアミラーなどが標準、またはオプションで揃い、オーディオにも力が入り、5.1ch対応のDVDシステムを持つ8スピーカーのブレビス・スーパーライブサウンドシステムなども用意されていた。

 2005年の一部改良では、全グレードにG-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付EMV(音声ガイド付カラーバックガイドモニター&ブラインドコーナーモニター付)、NAVI・AI-SHIFT(除く4WD車)を標準装備。ブラックを新外板色として採用するなど、商品力を向上させている。

 走らせれば、なるほど、セルシオを生んだトヨタの「小さな高級車」らしく、ロードノイズを含めた車内の静かさはこのクラスの国産車以上、いや、輸入車を含め、群を抜くもので、じつに滑らかな乗り心地を示した。低中速域での安定感たっぷりの走行感覚もまた好印象だった記憶がある。

 2005年の一部改良時点での車両本体価格はAi250エレガンスパッケージの359.1万円からAi300の422.1万円まで。

 とはいえ、ブレビスはトヨタの意気込みとは裏腹に、2001年から2007年までの1代限りで消滅。「セルシオでは大きすぎる、もっとコンパクトサイズの高級感あるクルマに乗りたい」というユーザーにうってつけだったかも知れないのだが、強気な価格設定、保守的なデザインであった。

 そして何よりも、プラットフォームを共用する同クラスのスポーティコンパクトセダンであり、走り好きの若者から大人にまでウケた、1988-1999年日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したアルテッツア(1998~2005年。その後のレクサスIS)のほうが、BMW3シリーズやメルセデス・ベンツCクラスの対抗馬として相応しい……という同門での位置づけ、ライバル関係(!?)も影響したようだ。

 日本では、「小さな高級車」はなかなか成功しづらいということもあるかも知れない。なお、ブレビスの後継車として挙げられるのは、2009年に発売された初代プリウス以来のトヨタのハイブリッド専用車であるトヨタ SAI(レクサスHSの姉妹車)となる。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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