この記事をまとめると
■採掘場などで使われる特殊車両には「ORタイヤ」が装着される
■過酷な環境で使われるので構造や使われる素材が特殊だ
■ブリヂストンが製造するがORタイヤを作れる工場は限られている
規格外の巨大タイヤの用途とは
クルマの足もとを支えているタイヤ。クルマの種類や目的によって大きさはさまざまだが、直径が4mもある大きなタイヤが存在しているのはご存じだろうか?
それが、建設、鉱山現場などで使用されている車両に装着されているタイヤだ。これは、「ORタイヤ」とも呼ばれるタイヤだが、一般的な乗用車用タイヤとの違いなどはどこにあるのか? 製造しているブリヂストンに話を聞いてみた。
ORタイヤってどんなタイヤ?
まず簡単に、ORタイヤはどのようなものなのか紹介しよう。これを装着する車両は、ダンプトラックやホイールローダーなどだが、車両重量260トン、積載重量370トンという桁違いに重量級な車両に用いられる。この車両が装着するタイヤには、1本あたり約100トンもの荷重がかかるという。さらに、舗装されていない荒れた路面を走行しなければいけない。
つまり、ORタイヤは高荷重に耐えるだけではなく、悪路走破性や荒れた路面でも壊れない頑丈さが必要とされるタイヤなのだ。
大きなタイヤのサイズは種類によって異なるが、400tダンプトラック用だと直径約4m、幅約1.5m、重量はタイヤだけで5.5tにもなるそうだ。
ORタイヤ独自の技術ポイント
では、乗用車用のタイヤと異なる特徴はどんなところにあるのだろうか?
まずは構造。トレッド面にあるスチールベルトは乗用車用のものは2層であることがほとんどであるが、ORタイヤでは6層にもなっているものがある。これは高負荷に耐えるためだ。また、骨格を形成するカーカスプライは、乗用車用はポリエステルが現在一般的だが、ORタイヤはより頑丈さを求めてスチールが採用されている。
そして、外的要因からタイヤが損傷を受けないように(耐カット性)耐摩耗性が優れたコンパウンドやより厚いゴムが採用されている。舗装されていない路面を走行するため、悪路でもトラクションとグリップを得られるタイヤパターンが採用されているのも通常の乗用車用タイヤとは異なるポイントだ。
ORタイヤの生産は特殊で工場が限られる
先にゴムが厚いと紹介したORタイヤだが、ゴムが厚いので熱がこもりやすいという点がある。これに対応するために、耐熱性に優れたコンパウンドを使用している。一方で、寒冷地での使用にも備えて、低温でも硬くなりにくいことも求められる。耐摩耗性、耐熱性、低温での軟性、ORタイヤのコンパウンドにはさまざまな要素が求められている。
そのため、ORタイヤの生産は高度な生産技術や大型の特殊設備が必要となり、生産ができる工場は限られている。ブリヂストンの場合、ブリヂストンの場合、この超大型ORタイヤは北九州工場と下関工場で生産されているとのこと。
装着する車両や使用状況が異なれば、タイヤに求められる性能も異なってくる。ORタイヤはその最たる例といえるかもしれない。
鉱山車両というある種、極限の性能が求められる車両だからこそ、装着されるタイヤにもそれ相応の性能が求められるのだ。ORタイヤは高い技術力が無ければ製造できない、スペシャルなタイヤといえるだろう。