すったもんだがあった「ジュニア」だがクルマのデキはお見事
が、自動車メーカーだって、そんなことは百も承知だろう。何せ正式な諸手続を経て正式に車名を登録し、新型車を正式に発表したわけだし。イタリア政府の主張に説得力がまったく感じられないのは、当然といえば当然だ。
これは何だかキナ臭いぞ。そう思ってたのだけど、これまで先述の知人によると、どうやら目に見えないところでステランティスとイタリア政府の間で、イタリア国内での自動車生産にまつわる対立構造があった模様。
イタリア国内での生産を増強して雇用を確保しろと迫ることで国民にアピールしたい現政権。イタリア国内で生産しないことでクルマの販売価格を1万ユーロほど引き下げたいステランティス。そしてグローバルな企業であるステランティスは、同じプラットフォームをもつフレンチブランドのクルマやアメリカン・ブランドのクルマと同じく、イタリアン・ブランドのニューモデルをポーランドで生産するという、当然の選択をした。
今回のイタリア政府の措置はそれに対する報復のようなものだろう。現地ではそういわれているらしい。
それを受けてのステランティスの動きは見事なもので、“ミラノ”と同じく一般公募から候補に上がっていた“ジュニア”という歴史的な名前へと車名を変更するとともに、車名変更を伝えるプレスリリースのなかに、“この議論によってもたらされた無料の宣伝に対し、政府に感謝します”と、粋とも皮肉とも受け取れるコメントを刻み込んでるのだ。
デビューに際して子どもじみた政府の干渉を受けることになってしまったミラノ改めジュニアだが、もちろんその出来事がこの新しいモデルの魅力を左右するようなことにはならない。いや、じつにお見事! といえるだけの出来映えを見せてくれたからだ。
そう、じつは僕もジュニアの国際試乗会のために、イタリアはバロッコにあるテストコースに飛んでいたのだ。近々、そのときのリポートを皆さんに御覧いただけると思うので、どうかお楽しみに。