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同じ場所を同じような速度で走っても「タイヤの長持ち度」が全然違う! レースで出てくる「タイヤマネジメント」って何をしている?

同じ場所を同じような速度で走っても「タイヤの長持ち度」が全然違う! レースで出てくる「タイヤマネジメント」って何をしている?

この記事をまとめると

■モータースポーツでは「タイヤマネジメント」という言葉が使用されている

■レース用のタイヤは性能の一番美味しい部分が狭いとされている

■グリップ力などを如何に長く持続させるかが勝敗をわける

レースでよく聞く単語の意味とは

 F1をはじめ、レース中継を観ているとたびたび耳にする「タイヤマネジメント」という単語。この「タイヤマネジメント」の意味はふたつあって、ひとつは適正な作動温度に入れてタイヤを使うこと。もうひとつはラップタイムを犠牲にせずに、タイヤを長もちさせること。

 レース用のタイヤはピークのグリップが高いぶん、スイートスポットは狭く、一番グリップ力を発揮する作動温度領域も、100℃前後の±10~15℃ぐらいに限られている。

 予選などでは、アウトアップもしくはアウトラップに続くブリップラップで、前輪・後輪ともに上手くこの作動温度領域(ワーキングレンジ)になるよう温めないと、一発のタイムが出せなくて、決勝グリッドは後ろのほうに沈んでしまう。

 それよりも問題はむしろ後者のほう。タイヤは使えば使うほど性能が低下してくる。綺麗に減っていったとしても、性能低下=デグラデーションは起きてくるが、タイヤに負荷をかけすぎると、タイヤがオーバーヒート気味になり、やがてタイヤ内のなかの物質が発泡してブリスターが起き、接地面積が減少するのでグリップ力がダウンしてくる。

 反対に、タイヤが温まりきらない状態でプッシュをすると、タイヤの表面が荒れて、ささくれ摩耗=グレイニングが起きて、グリップ力が失われる。

 コースによって、フロントタイヤに厳しいサーキットもあれば、リヤタイヤに厳しいサーキットもあり、そうしたなかで、常に前後・左右のタイヤの状態に気を配り、タイヤのいい状態を長く保てるドライバーが、タイヤマネジメントの上手いドライバー。

 タイヤマネジメントの上手いドライバーは、ピットインの回数を減らしたり、ひとつのスティントの長さを伸ばせるので、戦略の自由度が増したり、ライバルよりもソフトなタイヤをチョイスできるなど、レースで非常に有利になる。

 具体的にはタイヤの摩耗に合わせて、前後のブレーキバランスを調整したり、デフの効き具合を変更したり、舵角を減らしてスリップアングルを減らしたり、アクセルの踏み方を丁寧にしたりし、前車との間隔を開いて、ダーティエアを避け、ダウンフォースが減らないようにしたり、ラップタイムを調整するなどの方法で、タイヤを長もちさせると思えばいい。

 また、リヤタイヤのデグラデーションが進んできたら、ラインを変えて旋回時間を短くし、横のグリップではなく、縦のグリップをなるべく使うようにするとか、ブレーキの踏み方、戻し方を調整し、タイヤの負担を分散させる乗り方に切り替えていくことなども重要になってくる。

 当今のハイレベルなレースを制するためには、一発のタイムが出せるのはまず大前提として、そのうえでタイヤマネージメントの能力が勝敗をわけるケースが多く、チームのナンバー1ドライバーとナンバー2ドライバーの格付けの差も、このタイヤマネージメントの巧拙で決まっている部分も多いぐらいだ。

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