この記事をまとめると
■オールシーズンタイヤの雪道性能には限界がある
■そんな常識を打破し得るのがダンロップの新技術
■雪道、乾燥路で試作モデルを装着した車両に乗った
常識を打破し得る「アクティブトレッド技術」
冬季の雪道だけでなく夏の乾燥舗装路も走れ、1年を通じて使用できる「オールシーズンタイヤ」が最近注目されている。夏用タイヤと冬用スタッドレスタイヤを季節ごとに履き替える作業はユーザーにとって負担が大きい。近年はタイヤショップやディーラーでの換装預かりサービスも増えているが、預かれるセット数には限りがあり費用もかかる。
タイヤの保管や換装作業ができるガレージが自宅にあり、自分で交換する人も多いが、たとえばマツダCX-5用19インチサイズでもタイヤ/ホイール1本あたり重量は30kgほどもあり交換作業は大変だ。春先に苦労して夏タイヤへと交換した翌日に急な降雪に見舞われるなど天候不順が慢性化している近代ではオールシーズンタイヤが注目されるのも頷ける。
しかし、タイヤに詳しい人ならば、そんな夢のようなタイヤが実現できるものかと懐疑的になるだろう。実際、現在販売されているオールシーズンタイヤのほとんどは「雪道も走れる」と紹介するのがはばかれるような中途半端な性能のものばかりだ。購入してみたものの雪山では坂道登坂で発進できないとか、下りのアイスバーンで止まれなかったという恐怖体験をしたユーザーも多いだろう。その状況はおそらくスタッドレスタイヤであったとしても厳しいといえるわけで、オールシーズンタイヤはおもに市街地で急な降雪に遭遇したときになんとか自宅まで帰れる程度の雪路性能だとメーカー各社は広報している。
そんなオールシーズンタイヤの常識を打破すると期待されているのが、今回ダンロップが公表した「アクティブトレッド技術」だ。
ゴムは低温になると硬化し、また水に対する親和性が低い。スタッドレスタイヤはコンパウンドゴムに工夫を凝らして低温下でも硬化しにくく、また細かなサイプや給水技術を盛り込んで氷雪路でもグリップが引き出せるように特化したもの。それだけに、そのまま高温の乾燥舗装路を走ってしまうと摩耗が激しく、またウエット性能も低く安全性を損なう。
北海道など寒冷地のユーザーは短い夏季を見越して1年中スタッドレスタイヤのままクルマを走らせてしまう人も多いが、近年の気温上昇や大雨など異常気象の増加で危険性が高まっている。
そこで登場したのがアクティブトレッド。低温時は「温度スイッチ」が入ってコンパウンドゴムの硬化を抑制し、またウエット路面では「水スイッチ」が機能してコンパウンドゴムが柔らかくなる。ダンロップはこれを「ウエザースイッチ」と呼び、オールシーズンカテゴリーをさらに「シンクロウエザー」と再定義して「アクティブトレッド搭載商品」として実現したというのだ。
この新技術を採用したオールシーズンタイヤの試作モデルを冬の北海道旭川の氷上・圧雪テストコースと初夏のダンロップ岡山テストコースで試走することができた。
車両はトヨタ・カローラスポーツのハイブリッド(FF)車とメルセデス・ベンツGLC 4マチック全輪駆動車だ。