この記事をまとめると
■メルセデス・ベンツは2010年からオーナー表彰制度を日本で開始した
■対象は保有年数の長さと走行距離の2種類だ
■対象となる条件を達成するのは大変に見られるが欧州では珍しい条件ではない
メルセデス・ベンツの表彰制度とは
メルセデス・ベンツは、2010年からオーナー表彰制度を日本で開始した。表彰の対象は、長距離走行の車両を保有する場合と、1台の車両を長期間保有する場合の2通りある。条件を達成すると、感謝状とともに化粧箱に入れられた特製エンブレムが贈呈される。
走行距離の規定は、10万km、20万km、30万km、50万km、そして100万km以上の段階があり、順に特製エンブレムの色が変わる。100万km以上はゴールドになる。
保有期間では、10年、15年、20年、25年、30年以上の段階がある。
距離にしても保有期間にしても、途方もない数字だと日本では思えるかもしれない。しかし、たとえばドイツ本国では年間に約3万km以上走行し、新車購入からわずか3年で10万kmに達するような消費者も珍しくなく、特別なことではない。
その耐久信頼性の高さについては、ドイツではメルセデス・ベンツが多くのタクシーに使われている実態から見て取れる。海外では、タクシーは基本的に個人営業であることが多く、タクシーにメルセデス・ベンツが選ばれることと無関係ではない。
ことにドイツでは、速度無制限区間のあるアウトバーンを走る機会もあり、高速で間違いなく顧客を目的地へ運ぶ責任において、適切な車種を選ぶことがタクシードライバーの自負になる。それでいて、経費がかかり過ぎたのでは、タクシー業としての収支が合わなくなる。そこを含め、メルセデス・ベンツを選ぶ理由があり、そうした品質が、個人所有者の長距離走行や長期間保有の表彰の対象にもなるわけだ。
販売店にとっては、新車が売れることが何より大切で、あまり長期間新車への代替えがないと販売不振につながるのではないかと懸念するかもしれない。しかし、販売店の実態は、事業の3本柱として、保守管理(整備代)、損害保険、中古車販売であり、新車販売はそれら事業の3本柱を維持するための種蒔きの意味がある。新車が売れなければ種蒔き(新規顧客との縁)がままならなくなるとはいえ、その顧客が他社へ流れず、乗り続けてくれれば、整備代としての売り上げで販売店の事業は安定するのである。もちろん、メーカーとしては交換部品の販売につながる。
また、モノを大切に使い続け、廃棄物を減らす取り組みに通じ、環境保全にひと役買うことでもある。
自動車を発明したメーカーとして、自動車事業と環境保全を多角的にとらえた、手本とすべき表彰制度といえるだろう。