本格的ライドシェア解禁の結論は先送りに! 導入に向けてのハードルは「犯罪への心配」かと思いきや別のポイントだった (2/2ページ)

スマートフォンを介したサービスはメリットだらけ

 このようななか、スマホアプリによるマッチングサービスとなる「ライドシェア」は、筆者個人としては諸外国において「安全な移動手段」を開拓したものと考えている。スマホを介して車両と利用者をマッチングさせ、スマホに目的地入力もするので、乗車時に運転士との会話でのやりとりがまずなくなった。そして、ライドシェアは事前に運賃が確定するので、明朗会計となり料金のぼったくりにもまず遭わなくなった。

 雨天時の夕方など、繁忙時間帯の中国の大都市でタクシーに乗ると、乗ってきたのが外国人だとわかった運転士は、まずメーターは入れてくれず料金交渉となる。ようやく交渉に妥結して出発しても、渋滞がひどくなると「予想外に時間がかかるのでさらに料金を追加してくれ」といいだしてくることがほとんどであった。とにかくこのような面倒な料金交渉から解放されたのは、とにもかくにもライドシェアアプリのおかげである。

 また、スマホを介してマッチングさせて利用すると、乗車後には運転士の評価をしたり、スマホ上でチップを料金に上乗せしたりするので、運転士の対応もみるみる改善された(よくなった)。指定時間にまずやってこなかったインドでは、時間どおりにとりあえず車両に乗ることができるようになった。どの車両にいつ乗ったのかという履歴が残ることもメリットとしては大きい。記録が残るし、評価次第では身入り(チップ)もよくなる。このような環境下で進んで犯罪に走ろうとする運転士はそれほど多くないものと考えている。

 アジア圏ではアプリ配車による「バイクタクシー」も多く走っている。見ていると若い女性の利用も目立っている。年間を通じて日本の真夏のような天気の地域なので、そのなか薄着の女性がバイクの後席に座るのだから、ライダーにしがみつくなどライダーとの密着度も結構高いように見える。

 そのような状況下、犯罪が極端に目立つ(とくに女性をねらった)サービスならば、ここまで若い女性が積極的に利用しないのではないかなどと考えながら、いつもその様子を見ている(筆者は事故の側面でのリスクを考えてバイクタクシーの利用を控えている)。

 ちなみに2019年比でレイプ犯罪件数を比較すると、日本はアメリカの約4.4%となっている。プラットフォーマーも、運転士の犯罪を放置しようとは考えていないのは当たり前の話。そして抑止のためにさまざまな「仕掛け」をしているのもまた否定できない事実だろう。

 さらに、「ライドシェアを解禁したら女性が犯罪に巻き込まれる」とのことだが、令和のいまであっても日本のタクシーでそれがまったくないというわけではない。

 タクシーではいまだに「ワンメーター」ともいわれる短距離利用だとわかると運転士に舌打ちされたり、とたんに態度が豹変するという、犯罪ではないけど嫌な思いをすることがある。しかし、空いている時間(非常に限られた時間)を利用した副業ともいえるライドシェアでは、長距離移動よりも短距離で稼働時間内に回数を稼げるほうが歓迎される。事実、諸外国では余裕で徒歩圏の移動で利用しても、筆者は文句をいわれる経験をしたことはない。

 それでも気になる人は、よりリスク回避できるタクシーを利用すればいいだけで、ライドシェアを全面解禁したからといってタクシーがなくなるわけでもない。

 しかし、日本でライドシェアサービス導入の論議が行われ始めたときとは、タクシーを取り巻く環境は大きく変わった。それはタクシーの稼働台数が増えており、さらにタクシー配車アプリの普及もあり、そのようなサービスに加盟している事業者か否かも手伝い、運転士の収入も格差が広がってきているのである。今回、本格的なライドシェア導入への結論が先送りになったのだから、いまいちどタクシーの現状を再確認して、解禁するかどうかを議論して欲しい。

 どうするか悩む前に、「とりあえずやってみよう」と考えると同時に、「問題が生じたらすぐとりやめよう」という英断ができなければ、ライドシェアに限らず、時代に即した新しいものを採り入れることは難しいものとも考えている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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