これがレクサスってマジ!? まったく「らしくない」レクサス・ランドーというコンセプトカーの正体とは (2/2ページ)

もうひとつのレクサスがあったかもしれない

●丸く大きなウインドウで広い室内を表現する

 では、なぜランドーは強い丸みで構成されたのか?

 イタルデザイン、ジウジアーロというと、たとえば初代ゴルフやパンダなどに代表される、直線基調のシンプルなデザインが思い起こされますが、じつは意外に丸みを持たせた提案も少なくありません。

 たとえばランドーが発表された1990年代を見ると、1993年にはブガッティEB112や後にDAEWOOのマティスとなったLucciola、1994年にはフィアットのFirepoint、1997年のDAEWOO Leganzaなど、フロントまわりやウインドウ形状などに円形を取り入れたクルマが多く見られるのです。

 そのなかでもランドーの丸さが際立っているのは、コンセプトである「コンパクトなボディに最大限の居住空間をもたせる」ことを象徴的に表現したためでしょう。また、その丸さにある種の上質感をもたせた点もポイントです。

●スピンドルグリルのないレクサスもあり得た?

 その後、レクサスは独自のデザインフィロソフィ「L-finesse」を打ち出し、日本的なアプローチとして繊細さを極めて行きます。さらに、海外市場でライバルに埋もれない個性を目指し、2012年の4代目GSからはご存じスピンドルグリルを提示。そうして最新作のLMに至るまで、より繊細に、よりシャープに、そして強い押し出しに邁進中です。

 そこで思うのは、「もしレクサスがランドーの方向でデザインを進めていたらどうなったのか?」という疑問。

 その大きなヒントが、1990年代後半にイタルデザインが手がけたマセラティの3200GTやブガッティのEB118などにあると筆者は想像します。いずれも流麗なボディのなかに楕円の要素を織り交ぜたスタイリングはエレガントそのもので、その上質感は圧倒的。もしかしたら、これがもうひとつのレクサスの歩む道だったのでは?

 恐らく、初代GS(アリスト)をイタルデザインが手がけた縁からランドーの企画が持ち上がったのかもしれません。そのあたり、当時の状況は知る由もありませんが、ほとんどのクルマ好きの記憶にすら残らなかったこの企画には、じつは極めて大きな可能性があったかもしれないのです。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

愛車
いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
趣味
オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

新着情報