シングルカムは性能がイマイチ……ってわけでもない! クルマのエンジン「DOHC」と「SOHC」は何がどう違う? (2/2ページ)

DOHCは燃費効率とパワーの追求の両立が可能

 そうした欠点を解消すべく生まれたのが、吸気と排気それぞれにバルブを駆動させるカムシャフトを置くDOHCだ。カムシャフトが2本あるため「ツインカム」とも呼ばれる。このルールに則りSOHCを「シングルカム」や「1カム」と呼ぶこともある。

 DOHC(ツインカム)=気筒当たり4バルブというイメージも強いが、初期のDOHCエンジン(たとえばトヨタ2T-G型など)においては、DOHCであっても気筒当たり2バルブであることも珍しくなかった。あくまでも吸気と排気のバルブレイアウトや駆動の自由度から選択されるのがDOHCだった。吸排気バルブをそれぞれ2個持つ4バルブヘッドなどが生まれてくるのは、そのあとの話だったりする。

 同様に、SOHCは気筒当たり2バルブのエンジンしか設計できないわけではない。カムシャフトとバルブの間にロッカーアームという部品を使うことでSOHC4バルブのエンジンを設計することもできる。古くはホンダがシティに搭載したD12A型エンジンが1カム16バルブだった。ポテンシャルとしてSOHCだから劣ってしまうとはいい切れない。

 ただし、付加価値などの商品力を考えると、高性能な4バルブエンジンにおいてはDOHCヘッドにすることが常套手段となり、「DOHCはSOHCより高性能」と捉えられるようになっていったのも事実だ。逆にいうと、SOHCエンジンは実用域で扱いやすいキャラクターにセッティングされることが多かった。

 現代のガソリンエンジンでは燃焼効率や環境性能を追求するため、カムシャフト自体を動かす「可変バルブタイミング機構」を備える必要がある。結果として、実用的な性能を狙ったエンジンであっても吸気と排気のバルブタイミングをコントロールできる幅が広がるDOHCを採用するケースがほとんどになっている。なにしろ軽商用車のエンジンであってもDOHCかつ可変バルブタイミング機構を備えている時代なのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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