「らしさ」でクラウンならではの価値を提供
インテリアはまさに三車三様で、高級セダンらしくフォーマルななかにも新しさを感じさせるクラウンや、オーソドックスななかに光の演出を取り入れるなど新しいことにも挑戦した5シリーズに対し、ダッシュ全面がスクリーンになるEクラスだけぶっ飛んでいる。
このクラスでは重要な後席の居住性は、そのために生まれたはずのクラウンがやや見劣りするのが気になる。水素タンクやその他諸々をくまなく積んだ事情もあって、シートの座面が高くて頭上空間に余裕がなく、膝前のスペースもそれほど広くない。加えてトランクも期待したほど広くない。その点、5シリーズは広々としている。EクラスもPHEVのトランクを除いて、十分な広さが確保されている。
走りについては、MモデルやAMGを含めると事情は変わるだろうが、本稿執筆時点で3車種の日本で買える全車のエンジンが4気筒である点には時代を感じずにいられない。
ドイツ勢ではディーゼルが選べ、MHEVやPHEVはあるが、かたやクラウンはFCEVを普通に選べるのが大きな特徴であるのはもちろん、もうひとつの新しい2.5リッター直4エンジンと、2モーターに有段ギヤを組み合わせたマルチステージハイブリッドのHEVも、なかなか注目に値する。より高度な電動化を実現しているのがクラウンセダンの強みだ。
モーターで駆動するFCEVの静かでなめらかで力強い走りはさすがのものがある。一方のHEVも、LS等のV6から直4になったものの、クラウンに相応しい上質なドライブフィールを実現している。
シャシー性能については、さすがはこのクラスのセダンだけあっていずれも上々の仕上がりだ。乗り心地が快適で、いずれもサイズを感じさせない軽快な走りを実現している。なかでももっとも印象的なのが5シリーズだ。快適性で一歩リードしているうえに、ハンドリングもこのサイズのクルマながら本当に意のままに操ることができることに感心した。
かたやトヨタブランドのフラッグシップであるクラウンセダンは、よりショーファードリブンを意識した乗り心地とされている印象を受けた。さらに、後席の快適性に特化したモードも選べるようになっている。それが与えられた使命ということだろう。また、あまりそう見えない気もするが、軽快な回頭性(とくにフロントの軽いPHEVはなおのこと)は、なかなか気もちがよい。
アッパーミドルクラスのセダンの市場が縮小しても根強い人気を誇る5シリーズやEクラスに対し、クラウンは少し違った立ち位置で、あくまでクラウンらしく、クラウンだからこそ提供できる価値を追求している、ということだろう。