この記事をまとめると
■トヨタのハイブリッドシステムに「ハイブリッド130」という新システムが導入された
■欧州特有の速い巡航速度に対応しつつ燃費性能も追求されている
■国内で高速道路の時速120km区間が今後増えていけば国内導入の可能性もある
「ハイブリッド130」ってなんだ?
トヨタのハイブリッドシステムは、1997年に初代プリウスが発売されて以来、ふたつのモーター/発電機を備えるシリーズ・パラレル式であることに変わりはない。これをトヨタ・ハイブリッド・システム(THS)と名乗る。その後、モーターとエンジンの最適な効率を促す動力分割機構が改良されたTHSII(ティー・エイチ・エス・ツー)へ進化するが、基本概念は同じだ。
そのTHSIIを基に、モーター/発電機の出力を高めたのが、欧州向けとされるハイブリッド130である。ガソリンエンジンに大きな変更はなさそうだが、モーター/発電機の性能が上がったことと、制御を行うコンピュータの改良により、発進加速/追い越し加速ともに性能が向上しているという。また、二酸化炭素(CO2)排出量にかかわる燃費も、改善されたようだ。
かねてより、THSおよびTHSIIは、エンジンとモーター/発電機による総合的な効率を高めることで、動力性能と燃費の両立をはかってきた。ただし、高速領域では、必ずしも期待どおりではなく、こと走行速度域の高い欧州では、ハイブリッド車に対する懐疑的な評価が根強く、ディーゼルターボエンジン車の人気を高めることにつながった。
欧州では高速道路の最高速度が時速130kmで、ドイツのアウトバーンは無制限区間もあるほどだ。高速道路に限らず、欧州では、郊外の道路において時速80km前後で走ることが日常的である。
そして、いよいよ欧州での二酸化炭素(CO2)排出量規制が95kg/kmへと厳しさを増し、そこにディーゼル排ガス偽装事件が起き、ディーゼルターボ車への懸念が高まり、ガソリンハイブリッド車への期待が、ことに小型車の分野で期待されるようになった。電気自動車(EV)の品揃えが、まだ上級車種中心であるからだ。
今回のハイブリッド130は、そうした欧州の事情を踏まえ、国内より高速走行の多い欧州で、動力性能はもちろん、燃費を改善する措置として導入されたと考えられる。
速度が上がるほど空気抵抗の影響が高まる。速度の2乗で空気抵抗が増えていくからだ。たとえば、時速100kmから200kmになれば空気抵抗は4倍になる。時速80kmから100kmへ高まっただけでも、空気抵抗は約50%増しになる。
そこで、高速領域でもモーターの活用を増やし、燃費を稼ぐのがハイブリッド130の狙いだろう。
国内でも高速道路の一部で最高速度を時速120kmとする区間が誕生している。時速120km区間が今後増えていくようであれば、ハイブリッド130の国内への適用が検討されるかもしれない。