スバル史上最速と目されるWRX ARA24
ギヤボックスはWRCで定評のあるサデフ製の6速シーケンシャルで、足まわりの構造変更を実施。ダンパーおよびスプリングはイギリスの新興ブランドであるR53で、ブレンボ製のブレーキシステムが採用されている。
もちろん、前後のバンパーおよびフェンダー、リヤウイングを含めて、独自の空力デバイスが採用されていることは一目瞭然である。興味深いのは、サーキット競技のレーシングカーのように、アンダーガードもフラットボトムになっていることで、ARAはグラベルを主体とするシリーズながら、同モデルは床下の空力性能が追求されているのである。
ちなみにホイールはスパルコで、タイヤは全日本ラリーのグラベル戦でも使用されているヨコハマのADVAN A053を装着。車両規定における最低重量は2900kgとなっている。
ARAの規定により、同モデルはRally2と同等の性能になるようにデチューンされていることから、昨年まで投入されていたVA型のマシンと比べるとエアロダイナミクスはおとなしいフォルムとなったほか、リストリクター系も縮小されているが、いまだにそのパフォーマンスは高く、昨年の王者、セメナックは「昨年までのモデルに比べて、スバルWRX ARA24は大きなステップアップをしています。旧型モデルの10年間の経験がフィードバックされているので、すべてにおいて改善していると思います」とインプレッション。
さらに、ナイトロクロスやナスカーへの参戦により、2023年のARAを休止していたパストラーナも、「2022年のマシンはリストリクターが大きく、最高速度はいまもよりも速かったけれど、コーナリングがよくなったことで1マイルあたり0.5秒は速くなっている。非常に俊敏なマシンで、性能にエキサイティングしているよ」とのことだ。
事実、スバルWRX ARA24のパフォーマンスは高く、最新のヒュンダイi20 N Rally2を凌駕。ドライバーの実力を加味したとしても、圧倒的な戦力差があることは否めない。
同じVB型とはいえ、新井の駆る全日本ラリー選手権のWRX S4は、2400ccのFA24型エンジンが搭載されたことで開発に苦戦。さらに、比較的改造範囲の広いJAFのJP4規定で開発されているとはいえ、市販車両の延長に位置しているが、アメリカ・ラリー・アソシエーションのWRX ARA24は実績の豊富なEJ20型エンジンを搭載したことに加え、WRカーのように純レーシングカーとして開発されていることから、おそらく全日本ラリーのWRX S4とアメリカのWRX ARA24が同じ土俵で勝負したら、WRX ARA24に軍配が上がるに違いない。
アメリカで活躍中のWRX ARA24は、スバルのラリー史において歴代最速のラリー車両と呼べる存在である。日本で見られないのは極めて残念だが、今後もその動向に注目したい。