旧車でお馴染みの激冷えのエアコンガス「R12」! 効果は抜群だが「地球破壊」に繋がる諸刃の剣だった

この記事をまとめると

■クルマのエアコンは沸点の低い液体(冷媒)を使って車内の空気を冷やす仕組みだ

■冷媒にはR12と呼ばれるよく冷えるガスがかつて使われていた

■R12ガスは環境に悪いとのことで現在では「HFC134a(R-134a)」などが使われる

R12ガスってどんなガス?

 梅雨に入るとエアコンのありがたみが身に沁みる。高温多湿で、年々猛暑日が増えている我が国のカーライフにエアコンは必須不可欠といっていい。

 ここで簡単にエアコンの原理を説明しよう。

 水でもアルコールでも、液体が気化するとき、周囲の熱を奪っていく。エアアコンはとっても沸点の低い液体=冷媒を使って、エバポレーターという熱交換器の内部に冷媒を流し、エバポレーターの周囲を通る車内の空気を冷やす仕組み。

 蒸発気化した冷媒は、コンプレッサーで圧縮して冷媒の温度をさらに上げて、ラジエターの前にあるコンデンサーに外気を当てて、再度冷却・液化してエバポレーターへ……という流れになっている。

 このエアコンの主役ともいえる冷媒が、いわゆるフロンガス。約20年前まで、クルマのエアコンのガスといえば「R12」というフロンガスが使われていた(R=年齢制限の意味ではない)。

 そしてこのこのR12、沸点がー29.8℃なので、よく冷える!

 しかも無色、無臭、毒性がない不燃性ガスだったので、エアコンの冷媒にうってつけ。それで重宝されていたわけだが、ひとつ大きな欠点が……。

 じつは地球温暖化の原因になる、オゾン層を破壊する効果が高いことが判明し、1995年末までに生産中止すると決定されて廃れていった(現在、R12は地球環境を破壊する「特定フロン」に指定されている)。

 もちろん、密閉されたクルマのエアコンシステム内を循環している限り、地球に悪影響を与えることはないわけだが、クルマはときに衝突事故を起こし、その際、エアコンの配管が壊れることもあるし、長年使っていると、配管のつなぎ目などから少しずつ冷媒が漏れて、エアコンの利きが悪くなることは、多くのユーザーが実感しているはず。

 こうしたことから、エアコンの冷媒に「R12」を使うのはやめようという流れになり、「R12」に変わり「HFC134a(R-134a)」が登場。これが現在主流になっている冷媒だ。

「HFC134a(R-134a)」はオゾン層を破壊するフロンではないのが最大の特徴。沸点は-26.1℃なので、「R12」よりちょっと冷えは悪い。地球温暖化係数も1430と、「R12」の10,900に比べればかなり低いが、二酸化炭素の1万倍を超える強力な温室効果ガスなので、クルマの解体時には回収が義務づけられている冷媒ガスだ。

 さらに最近では、新しい冷媒ガスとして「R1234yf」が注目を集めている。

「R1234yf」は、冷却性能こそ「HFC134a」よりも5%ほど劣るが、オゾン層を破壊するリスクがなく、地球温暖化係数もひと桁の4。唯一、微燃性があることが欠点とされるが、欧州をはじめ日本やアメリカでも、次世代のカーエアコン用冷媒ガスとして導入される方向だ。

 話を元に戻すが、地球に優しくない冷媒「R12」は、1995年に製造が中止されたため、現在では入手困難。わずかに出まわっている「R12」もあるが、取引価格は高価で、それが旧車オーナーの悩みのタネ。

 その代わり、R-12のエアアコンシステムを、R134a仕様に変換するレトロフィットキットがわりと安価(1万円前後)に出まわっている場合もある。

 冷媒のガス漏れが発覚したら、修理の際にレトロフィットキットを入れて、R134a仕様にしてしまうのがいいかもしれない。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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