メリットはあれどそう簡単には進まない! トラックやバスのEV化に立ちはだかるいくつもの壁 (2/2ページ)

問題はバッテリーや車両コスト

 国内における電動バスの製造・販売状況は、日野自動車が「ポンチョ」をベースに電気バス(小型バス)を受注生産したといった程度だ。現状は、圧倒的に中国製が強い。なかでも比亜迪汽車(BYD)製のK8 2.0(大型バス、1充電の航続距離240km)や、J6 2.0(日本仕様の小型バス、1充電の航続距離220km)などは国内各地に多数投入されている。

 このような現状に照らすと、電動トラックや電動バスを利用するための条件が見えてくる。ネックになっている航続距離の短さを考えれば、営業拠点(充電拠点)が近くにある範囲での運用とならざるを得ない。トラックであれば、街なかの配送が中心になってくる。路線バスの場合は、運行管理を行いやすいので比較的導入が容易だ。また、導入コストがかかるので公共交通機関・大手輸送事業者などが、補助金などを受けて運用する例が多くなる。

 根本的な問題は、バッテリー技術にあるといえよう。テスラの「セミ」は一充電の航続距離が800 kmに及ぶとされているが、それがバッテリーの寿命まで続くわけではない。劣化が進めば、20%ほど航続距離が縮まることも考えられるのだ。また、急速充電30分で7割程度回復できるという性能も、時が経てば5割程度の回復力に低下するという。充電設備の充実もそうだが、充電時間ももう少し縮めたいところだ。

 また、車両コストをダウンすることも重要である。日野自動車の「ポンチョ」の場合、ディーゼル車(量産車)は1800万円程度だが、EVに改造した車両は8000万円程度になったという。その多くが、バッテリーコストなのだそうだ。

 トラックの場合は荷室容量や積載重量の確保から、バッテリーを小型化することも重要である。要するに、鍵となるのは現在主流となっているリチウムイオンバッテリーに替わり、蓄電量の増大・軽量化・低コストの新たなバッテリーが開発できるか否かということなのだ。


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