ハンドリングの感覚も異なる
大型トラックは長距離輸送が多く、輸送効率や燃費効率といった経済性を考慮して、満載状態で定速走行をするのが一般的だ。この場合、大型トラックなら積載量は10~15トン程度(車両総重量なら20~25トン程度)になるため、制動をかけて減速するときには、エンジンブレーキ・排気ブレーキ・リターダーといった補助ブレーキが中心になる。必然的に、フットブレーキを使用するのは緊急時か完全に停止させる場合が多くなり、ブレーキの利き具合を見ながら、ペダルを踏む力の調整をすることになるのだ。
バスも長距離観光バスなら基本的にトラックと同じなのだが、乗車人員の重量は満員でも5トン程度(車両総重量なら15トン程度)で大型トラックとは大きな差がある。当然、ブレーキをかけるタイミングが変わってくるのだ。まして、頻繁に停車をして乗降人数の変化が激しい路線バスであれば、都度ペダルを踏む力加減を変えていかなければならず、ドライバーは大変である。
ブレーキと同様に、大型自動車のドライバーが神経を使うのはハンドリングである。なぜなら、内輪差(右折・左折の際にできる内側の前輪と内側の後輪の進む軌道のズレのこと、外側のズレは外輪差)とオーバーハング(タイヤの中心から外側にはみ出した車体の部分のこと、前方部分はフロントオーバーハングで後方部分はリヤオーバーハングという)があるからだ。それは乗用車でも同じなのだが、車体の大きさに加えてホイールベースや車輪位置の違いが、大型車のハンドリングを難しくしているといってよい。
内輪差はホイールベースが長いと大きくなるので、大型自動車は全般的に内輪差が大きくなる。しかし、バスは運転席より後ろに前輪を配するため、同じ全長のトラックよりホイールベースが短くなるので内輪差も小さくなる。反面、運転席が前輪より突き出しているぶん、フロントオーバーハングに気をつけなければならない。
要するに、ハンドリングの感覚は全長が同じでもまったく異なるということだ。同じ大型自動車でも、これだけ運転感覚に違いがある。その技術をマスターし、日々運転業務に携わるドライバーの技術は、神業といっても過言ではないだろう。