その場で動かず街なかで作業する建機こそ「静かで排ガスの出ない」モーター駆動が向いている! フルEV化されたラフテレーンクレーンはディーゼルモデルと遜色なし

この記事をまとめると

■乗用車に比べて商用車のEV化は進んでいない

■一方でトラックや建機にとって電気は最適な動力だといわれている

■2023年12月にタダノからフル電動ラフテレーンクレーンが登場した

25t吊りフル電動ラフテレーンクレーンが登場!

 自動車業界はこぞって電動化(EV化)に向かっており、乗用車ではすでに実用化段階に入っているといってよいだろう。しかし、商用車では一部を除いてあまりEV化が進んでいるとはいえない。充電設備などのインフラの問題や、バッテリーの容量不足などといった技術的な問題に、まだ改善の余地があるからだ。

 とはいえ、電気はトラックや建機には最適な動力だといわれている。なぜなら変換効率が抜群にいいからだ。変換効率とは、投入したエネルギー(燃料など)を動力としてどれくらい取り出せるかを、数字で表したものである。ガソリン車の場合は約30%、軽油(ディーゼル)車の場合は約40%程度だそうだ。このことからもわかるように、そもそもディーゼルエンジンはガソリンエンジンより大きなパワーが効率よく生み出せるので、トラックや建機に採用されているのである。ちなみに、ガソリンエンジンは高回転が可能であることに加えて、構造上機関を小型化することができるので、乗用車用の動力に向いているのだ。

 これらに対して、電気モーターは変換効率が80%以上もある。条件次第では90%も可能なのだ。重量のある鉄道車両で考えればよくわかるが、新幹線のような速さも山手線のような加速も、電気エネルギーだからこそ実現できたのである。昨今、自動車のEV化が叫ばれているのは、環境問題だけではなくエネルギー効率から見ても、当然のことといえるのかもしれない。

 限られた範囲で作業を行う建機はEV化に適しているため、小型のタイプはすでに実用段階に入っている。最新情報としては、2023年12月に建機メーカーのタダノから、25t吊りフル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-250N」が、フル電動ラフテレーンクレーンとしては世界で初めて市場投入された。

 ラフテレーンクレーンとは、運転席で走行とクレーン操作の両方を行える自走式クレーン車のこと。公道走行が可能で、ビルなどの工事現場で多数活躍しており、比較的需要の高い建機である。

 今回登場した車両は、バッテリーを動力源としたモーター駆動により、走行/クレーン作業が可能なモデル。さらに、駆動用バッテリーは容量合計226kWhのリチウムイオン電池を使用しているので、1度満充電にしておけばその後は充電しなくても、1日のクレーン作業を行うことができるのだ。充電時間は急速充電(CHAdeMO方式)で約2.5時間。普通充電(AC200V 三相商用電源)でも約8時間だから、夜間など作業のない時間帯に充電すれば作業効率も高まる。

 もっとも、フル電動タイプとはいえ、性能がディーゼルタイプより劣っては意味がない。その点、最大吊上げ性能25t/最大作業半径34m/最大地上揚程44.2m/最高速度49km/hというスペックがあり、従来機と遜色がないのだ。

 現在、建機メーカー各社は各機種のフル電動化を目指して、急ピッチで研究・開発を進めている。クレーン車/ショベルカー/ブルドーザーはもちろんのこと、ダム工事などで活躍する超大型のダンプトラックに至るまで、電動化するさまざまな方式の実用化テストを行う段階に入っているという。

 このほか、小型ショベルでは無人化実験を行っている機種もある。今後の建機の進化に、ますます目が離せなくなりそうだ。


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