この記事をまとめると
■レーシングカーのステアリング位置は国産・輸入を問わず左右さまざま
■スーパーGTではかつてDTMと車両規格の統一化を図られて以降左ハンドルとなっている
■右ハンドルの国産モデルをベースに開発されたレーシングカーには右ハンドルが多い
レーシングカーのステアリング位置はどうやって決まる?
スーパーGTやスーパー耐久にはさまざまなレーシングカーが集結。国産モデル、輸入モデルに関わらず、左ハンドル車もあれば右ハンドル車もあったりで、よく見るとステアリング位置はじつにさまざまだが、果たしてレーシングカーのステアリング位置はどのように決められているのか?
まず、スーパーGTのGT500クラスには、トヨタが「GRスープラGT500」、ニッサンが「Z NISMO GT500」、ホンダが「シビックタイプR-GT」を投入。いずれも国産モデルをベースとするシルエットになっているものの、中身は純レーシングカーで、各マシンとも共通のカーボン製モノコックが採用されているのだが、ホンダの関係者によれば、「一時期、クラス1としてDTMと車両規格の統一化を図られたことがありましたが、そのときの流れからずっと左ハンドル車になっています」とのことで、車両規定が大きく影響しているようだ。
これと同様にGT300クラスやスーパー耐久のST-Xクラスに投入されているFIA-GT3車両は、FIAの国際規定モデルということもあって、世界各国でのセールスを前提にしているのだろう。「ホンダNSX GT3」、「ニッサンGT-R NISMO GT3」、「レクサスRC F GT3」といった国産モデルを含めて、ほぼすべてのマシンが左ハンドルを採用している。
一方、同じGT300クラスでも独自規定のGTA-GT300/GTA-GT300MCで開発された「レクサスLC500h GT」や「トヨタGR86 GT」、「スバルBRZ GT300」などは右ハンドル車が多くなっているが、これはもともと右ハンドルの国産モデルをベースにしていることが影響しているのだろう。
ちなみにスバルは前述のとおり、スーパーGTのGT300クラスに投入するスバルBRZ GT300は右ハンドルとなっているが、ニュルブルクリンク24時間レースに投入している「スバルWRX NBRチャレンジ2024」では左ハンドルを採用。
その理由について、スーパーGTでR&Dスポーツの総監督を務める小澤正弘氏によれば、「国内のサーキットでは問題ないんですけど、ニュルブルクリンクの場合、右ハンドルではフラッグが見えにくいポストもあるので、左ハンドルにしています」とのことで、サーキットの状況によってステアリング位置を選択しているのである。
ちなみにラリー競技車両も「トヨタGRヤリスRally2」など、国際規定モデルは基本的に左ハンドルを採用しており、同じGRヤリスでも全日本ラリー選手権のJN1クラスに参戦するJAF独自規定のJP4モデルは、ベース車両に合わせて右ハンドルが採用されているケースが多いが、新井敏弘選手のスバルWRX S4は、当初の右ハンドルから左ハンドルへ変更している。
その理由について「右ハンドルでも走れなくはないけれど、ずっとラリー競技は左ハンドル車でやってきて、それで慣れているから変更した」とのことで、ドライバーの好みに応じてステアリング位置の変更が実施されている。
このように同じ競技車両といえども、右ハンドル車両もあれば、左ハンドル車両もあったりで、マーケットや車両規定、チーム、ドライバーの状況に応じてステアリング位置が決められているのである。