大事にしているクルマを久しぶりに走らせるなら会話力を養おう
もっとも、タイヤをはじめとしたゴム製品は、たとえ屋内保管であっても時間経過によって劣化してしまう。
芸術品のような位置づけならまだしも、クルマ本来の機能を維持した状態をキープしたい(つまり動態保存したい)のであれば、定期的にエンジンをかけ、実際に走行させる必要があるといえる。
上記は極端なケースだが、スポーツカーなどの趣味車をセカンドカー的に所有している人のなかには「月に一度くらいしか乗らない」というオーナーもいるだろう。この場合でもエンジンオイルが十分に潤滑できる状態でない可能性もある。ひと月程度であれば、そのままエンジンをかけてしまっても問題ないかもしれないが、少なくともエンジンをかけてすぐに走り出すというのは避けたい。
道路環境が許すならば、エンジンやトランスミッション、さらにはサスペンションなどのオイルを使っている各部位のなかでオイルが馴染むイメージでゆっくり走るといいだろう。
期間をあけて走るのであれば、走行前にエンジンオイルやクーラント、タイヤ空気圧を確認することを忘れないようにしたい。
そうして各部が暖まってきたら、幹線道路への合流や高速道路での加速といったシチュエーションで意識的にフルスロットル(アクセル全開)をするようにしたい。よくいわれるのは「フルスロットルによってエンジン内部や吸排気ポートに溜まったカーボンを吹き飛ばす」というものだが、法定速度内でフルスロットルにできるのはおそらく非常に短い時間だろうから、カーボンを吹き飛ばすまでの効果は期待できないかもしれない。
それでもコンピュータ制御のエンジンであれば、たまにフルスロットル状態にすることで、元気な方向で学習が進むことが期待できる。小排気量エンジン車ならば、低いギヤのまま高回転までエンジンを使ってあげるのもいいだろう。
あらためて注意したいのは、こうしてエンジンのポテンシャルを引き出すような運転は、しっかりと暖機が済んでいる状態で行うべし、ということだ。たまにはフルスロットルにすることが推奨されているからといって、エンジンかけたての、まだアイドリングが落ち着いていないような段階で高回転までエンジンをまわしてしまうのは百害あって一利なしといえる。
「クルマと会話する」という表現は、スポーツドライビングにおいて限界性能を探ったり、ポテンシャルを引き出したりすることをイメージさせるが、大事にしているクルマを久しぶりに走らせるときこそ「会話力」が大事になってくる。愛車を大事にしたいのであれば、動き出したときに各部が正しく機能しているか、どこか不具合は発生していないかを感じられるようなスキルを身につけることを目指したい。