ヴェイロンよりもゾンダよりも速かった「アポロ」ってナニモノ? 世界にたった10台&4億円超えのスーパーカーで復活したブランドの正体 (2/2ページ)

新生「アポロ」となってハイパーカーを製作

 だが、GMGの栄光は長くは続かなかった。2013年には経営資金の注入元でもある支援者が、これ以上の援助を撤退したため、会社は破産を決定。2016年になると香港の企業によって買収され、車名は再びシンプルな、「Apollo Automobil」へと改名された。アポロというかつて製作されたスーパーカーの名は、それから10年以上の時を経てもなお、大きなバリューをもっていたのだ。

 アポロは2016年のジュネーブショーで、新たにアポロ・アローとして再デビューを飾る。搭載エンジンは最高出力がじつに1000馬力という4リッターのV型8気筒ツインターボ。最高速は360km/hを実現すると噂された。

 しかし、Apollo Automobil社が、創業者たるグンベルトの手にあったのは、ここまでだった。2016年アポロはインテンサ・エモチオーネと呼ばれるニューモデルを発表するが、同時にこのモデルに関しては、そして今後の会社経営に関しては、グンベルトは一切関係しないことが発表されたのである。スーパーカーの世界にはよくある会社の経営体制の変化といえばそれまでだが、やはりここまでの歴史を知るファンには寂しさを感じさせる発表だった。

 インテンサ・エモチオーネのスタイリングは、自然界に住む昆虫にインスパイアされたものであるという。たしかにその無駄のない、すべての形には機能があるというコンセプトは、先鋭的でありながら、かつ独特な美しさを感じさせるもの。

 ミッドに搭載されるエンジンは、6.3リッターのV型12気筒で、これはフェラーリの自然吸気F140型由来のもの。ただし、実際のチューニングには、メルセデスAMG社と現在も密接な関係にあり、CLK-GTRなどの開発にも関与した、まさにメルセデス・ベンツのレース活動における第一線ともいえるHWA社によって独自チューニング、そして車両の組み立ても行われている。ミッションは6速のシーケンシャル式MTだ。

 ちなみにこのインテンサ・エモチオーネの価格はヨーロッパにおいては230万ユーロ(約4億4000万円)。生産台数はわずかに10台に限定され、そのすべてはすでに売約済みとされている。最高出力は791馬力、最高速は335km/hに達するものと見られ、299km/h時のダウンフォースは1350kgという数字になるという。

 さまざまな紆余曲折を経ながら、現在においても新たなスーパーカーの開発に積極的なアポロ。これから彼らはどのようなモデルを市場に投じてくるのか。その動向が非常に楽しみなブランドである。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

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