この記事をまとめると
■初代ホンダNSXはオールアルミニウムのボディにより鉄よりも錆びにくい
■アルミニウムにも糸状腐食と電位差腐食が起こるのでホンダは対策を施した
■錆に強いアルミニウムの開発と表面処理を行って初代NSXの耐久性は高められた
アルミも腐食するのでホンダは初代NSXにあらゆる対策を施した
初代ホンダNSXはオールアルミニウムの車体が特徴のひとつだった。アルミの比重は約2.7で鉄の比重は約7.8であり、圧倒的にアルミニウムは軽い。比重とは、単位体積当たりの質量のことで、同じ体積で比較した場合にどちらが軽いか重いかを比較するのに使われる。概算で、アルミの重さは鉄の約3分の1であることが比重からわかる。
一方、アルミニウムは鉄に比べ柔らかいため、鉄と同じような強さを得るには、使い方の工夫が必要だ。初代NSXでは、鉄を使った場合に比べ約1.5倍のアルミニウムを使っている。それでも、鉄を使うより軽く仕上げられる。
もうひとつのアルミの特徴は、鉄に比べ錆びにくいことだ。ただし、まったく錆びないわけではない。アルミにも、糸状腐食と電位差腐食が起こるので、その対策をホンダは行った。
糸状腐食とは、アルミをそのまま水に漬けると生じる糸状の錆のこと。銀色に輝くアルミの表面が、濁ったグレーのような色になる。しかも、短時間で表面に広がる。そこで、ホンダは、糸状腐食に強い6000系アルミニウム合金を開発した。6000系というのは、窓枠用のアルミサッシなどでも使われる種類のアルミニウム合金で、ただし溶接しにくい欠点がある。これをクルマで使う目的でホンダは開発した。
電位差腐食とは、種類の異なる金属を接触させると、それぞれの金属が持つ電位(電気的性質:電圧と考えていい)の違いによって錆が出ることをいう。一般的に、電位の小さな金属側に錆が出る。ちなみに、アルミの電位は鉄の電位より低いので、アルミ側に錆が出る。
この対策として、ホンダはダクロダイズド処理(略してダクロ処理)を採用した。ダクロ処理とは、塗装して焼き付ける処理をいい、クルマではサスペンション関係のボルトやブレーキ部品、あるいはバネなどで使われている実績がある。
鉄の車体でも、防錆処理をしてから表面塗装を行っており、アルミニウムでも錆に強い特性の合金としての開発と、表面処理などを行って、NSXは耐久性を高めた。
こうして出来上がったアルミ車体を基本に、NSXを永く乗り続けるため、ホンダはかつて、リフレッシュプランを実施していた。基本的な点検のほか、パワートレイン/足まわり/外観/内装にまで及ぶ再生処置だ。
2016年からの第2世代のNSXは、アルミ押し出し成形材料と超高張力鋼板の鋼管を使った複合車体の構造に変わったが、初代NSX、そして初代インサイトで知見を得たアルミ技術が活用されている。