中国の巨大企業「ジーリー」が日本で試乗会……だが行ってみたら謎のイベント! ブランドの将来に不安しかない (2/2ページ)

サーキット走行も決められたコースを言われたままに運転するのみ

 大勢いた中国人はみな若い。聞けば中国のインフルエンサーたちで、このイベントを30秒の動画にまとめてメディアのプラットフォームで展開し、アクセスを稼ぐのが狙いなのだとか。インフルエンサーたちは4台用意されていたジーリーのハイブリッドシステム搭載車を順番に、筑波サーキットを1周だけ、メーカー担当者を隣に乗せて指示に沿って運転。筑波サーキットは1周2kmの短いコースなので30秒の動画編集には十分なのだろう。さらに、コースにはパイロンが置かれ、ライン取りも関係なく指示されたとおりに走らなければならないという。

 これらが判明した時点で時刻は午後2時を過ぎていた。

 結局、われわれ日本のジャーナリストに試乗の順番がまわって来たのは、すべての中国人インフルエンサーの搭乗後で、午後3時半をまわっていた。お昼前には終わるとされていた試乗会が、だ。とにかく試乗はしたが、メーカー担当者を隣に乗せて1周をゆっくり走らせただけで終了。クルマの評価などできるはずもない……。

 クルマ自体はスタイリングもよく、内装の仕上げも質感も素晴らしいものだ。それにBYDがEVオンリーのラインアップで国内導入しているのに、ジーリーはわざわざハイブリッドを新規開発したという点も興味深い。できればしっかりと走りこみ、開発チームにインタビューもしたかったのだが、今回のイベントはあまりにもお粗末でLynk&Coのときの感動も失せてしまった。

 聞けば中国人インフルエンサーたちは、翌日には群馬県の榛名山に移動し、なんと仮ナンバーで公道を走らせたようだ。これは仮ナンバーの使用規定に違反する行為で、国内規定を無視した行為だ。そちらには呼ばれなかったのは幸いした。

 じつは数年前から筆者にもこうしたイベントの開催について打診はあった。しかし、違法行為とならないようにしっかりした運営とケアが必要と伝えると音信不通となっていたのだ。

「郷に入れば郷に従え」といわれるように、中国を代表する巨大企業が「旅の恥はかき捨て」状態で試乗会を開催しては、せっかくのビジネスチャンスも台無しになってしまうだろう。今後、正規に日本への導入を望むなら、今回のようなお粗末な取り組みがあってはならない。あえて苦言をここで呈しておく。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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