クルマを一新して大幅な値引きとは決別
そしてマツダは、大幅値引きによる販売を数回にわたって控えようと試みた。
たとえば2002年に2代目MPVがマイナーチェンジを実施したときに、開発者は「今後はお客様が愛車を売却するときの利益を守り、販売会社の経営も健全にするため、以前のような大幅な値引き販売は行わない」とコメントした。しかし、結局のところ、多額の値引きで売る方法は変化しなかった。
この流れが大きく変わったのは、2012年に「魂動デザイン」と「スカイアクティブ技術」に基づく初代CX-5が発売されたときだ。クルマ作りが大幅に刷新され、多額の値引きをしなくても堅調に売れるようになり、値引き額も抑えられた。認定中古車を本格的に導入して、ユーザーが高値で売却できる体制も整えた。このときの開発者は「優れた商品開発によって大幅値引きと決別できた」とコメントした。
しかし、販売店の話は違っていた。「クルマの価格は高くなったが、その割に1台あたりの粗利は増えていない。販売報償金も同様で、以前のような値引きは経営的にも難しくなっている。ユーザーにとってわかりやすい売り方になったが、いいことだけではない」。
そもそも、大幅値引きを行っていた時代のマツダ車は「地獄」と呼ばれるほど悪かったのか? 先ほどのデミオ、あるいはロータリーエンジンのRX-8を始めとして、優れた商品も多かった。
マツダが値引き販売を積極的に行っていた2010年、マツダの国内販売総数は22万3861台であった。これに比べて2023年は17万7788台に減っている。「魂動デザイン」と「スカイアクティブ技術」に移行してからのマツダ車は、少なくとも日本では、それ以前に比べて売れ行きを下げている。地獄も天国も、どこを見るのか、捉え方次第だと思う。