スペーシアが5月の新車販売でトップに! N-BOXの首位陥落の理由は「ダイハツの不正問題」と「WR-Vの好調」にあり (1/2ページ)

この記事をまとめると

■2024年5月単月の車名別新車販売台数でホンダN-BOXが首位から陥落した

■N-BOXに代わって首位となったのは同時期にフルモデルチェンジしたスズキ・スペーシア

■乗用車ではトヨタの認証検査不正の影響が少ないシエンタの躍進に期待がかかる

新型N-BOXが販売台数の首位から陥落

 自販連(日本自動車販売協会連合会)と全軽自協(全国軽自動車協会連合会)から、2024年5月単月の車名(通称名)別新車販売台数が発表されると業界内がざわついた。新車販売ナンバー1の常連であったホンダN-BOXが首位陥落となったのである。

 とはいっても、2023年の各単月の販売統計を見ると、6月と7月はN-BOXがトップを逃している。ただしこれは先代、しかもモデル末期での話。現行N-BOXとしては初の首位陥落となっている。前述した2023年6月と7月は先代モデル末期で値引き条件もよく、好条件下でまさにセール状態のなかトップを逃しているのだが、これは供給上の問題や新型デビュー直前ということで、一部需要が現行型に流れていることも影響したとされている。

 その後、先代型ファイナルセールともいえる9月(現行モデルの正式発売は10月6日)には2万台超を販売し、先代モデルは有終の美を飾っている。そして、2023年10月は9月以上となる約2.3万台を販売している。これは現行モデルだけではなく先代在庫車もまだまだ新車として販売されていた結果と判断できる。11月も2万台超、12月は2万台弱を販売しているが、これは新型としてデビューした現行モデルの本格供給が始まったことを表しているといっていいだろう。

 しかし年が明け2024年になると雲行きが怪しくなってきた。販売台数自体はけっして見劣りの目立つものではないのだが、前年同期比でプラスにならないどころかマイナス幅が結構目立つようになっていた。新型車としてもてはやされる「新型車特需」のようなものは、発売後3カ月ほどしか続かないともいわれているが、その後の落ち込みは際立って見えた。

 2024年2月はスズキ・スペーシアに、そして2024年2月は登録車のトヨタ・ヤリスに僅差まで迫られながらもトップを死守していたが、ついに2024年5月、スズキ・スペーシアにトップの座を譲ることとなった。その差はわずか578台であった。スペーシアはN-BOXとほぼ時を同じくしてフルモデルチェンジを行っている。

 しかも、N-BOXが2024年に入ってから4月まで前年同期比で100%を超えられない月が続いているのに対し、スペーシアは、ときには前年同期比で150%を超える勢いでモデルチェンジ以降前年同期比100%超えを続けている。ダイハツが認証不正問題で生産及び出荷停止となり、ダイハツの軽自動車を購入検討していたユーザーをスズキが囲い込みに成功できたという部分があるものの、N-BOXとスペーシアはモデルチェンジ以降で明暗がわかれているといってもいいだろう。

 2024年5月単月は前年同期比で100%超えしたにもかかわらずN-BOXがトップを逃した背景には、いずれもホンダのなかで帰結するものが大きく影響しているのではないかと考えている。

 軽自動車における新車販売では、ディーラー名義などで行う「自社届け出」による台数の上積みが広範に行われている。ボディ寸法やエンジンなど規格が厳密な軽自動車では、性能面でライバルメーカーに差をつけるのは難しく、見た目の違いだけでどの軽自動車を買うかの判断をする人も多い。そのなかで「軽自動車ブランド」や「軽自動車のなかで」そして「新車販売」などのフレーズで「販売ナンバー1」というフレーズはかなり有効な販売ツールとなる。

 そのため、販売先もないのに未届け出の新車にディーラー名義などでナンバープレートだけつけて新車販売台数の上積みを行う「自社届け出」が頻繁におこなわれている。ダイハツが生産及び出荷停止をしているなかでも、自社届け出車両が届け出済未使用軽中古車として中古車市場に大量に流通していたので、「新車でダイハツの軽自動車が買えないのなら」と中古車にお客が流れたことも目立ち、新車販売においては、スズキぐらいしかダイハツ軽自動車を新車として買えない人の受け皿として目立った囲い込みはできなかったのである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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