現状ではウィークポイントが目立つ交換式バッテリー
EVのウィークポイントとして充電の待ち時間がある。その点を解消できるソリューションとなり得る「バッテリー交換によってすぐに走ることができるMEV-VANを量産すべきだった」という気もちになってしまうのは理解できる。
ただし、現時点での実用性という意味では、バッテリー交換型は利便性において優れているとはいい難い。それは航続距離の問題とバッテリー交換にかかる時間と体力が必要という課題があるからだ。
ジャパンモビリティショーに展示されていたMEV-VANでは、8個のモバイルパワーパックe:を床のカバーを開けて積む方式になっていた。つまり、バッテリー交換は空荷のときしかできないということになる。
モバイルパワーパックe:は、本質的には原付きバイクのような小型モビリティを前提としたバッテリーであり、その電力量は1パックにつき1314Whでしかない。N-VAN e:の電力消費率は127Wh/kmとなっている。ここから計算すると、おおよそのイメージとしてバッテリー1個で走れる距離は10km強に過ぎない。コンセプトカーのように8個のバッテリーを積んだとしても、せいぜい80kmの航続距離しか期待できないのだ。
しかも、このモバイルパワーパックe:の重量はひとつあたり10.2kgとなっている。けっして軽いとはいえないバッテリーをガシガシ交換する作業を考えると、万人向けのソリューションとはいえないだろう。
40km圏内の近距離用途や工場などの敷地内で運用するモビリティであればバッテリー交換型の小型EVを上手に活用できる可能性もあるが、満充電で200km以上を走ることのできるEVに対して「こんな航続距離じゃ使い物にならない」と切って捨ててしまうユーザーが少なからずいる現状では、航続距離が二桁kmのバッテリー交換型EVのニーズがあるとは思えない。
重さ10kg程度のバッテリーひとつで、100km以上走れるようなテクノロジーが開発されれば、バッテリー交換型EVに商品性が出てくるだろうし、そうした方向での技術開発も期待したいが、現時点の技術レベルからすると、N-VAN e:のように29.6kWhのバッテリーを床下に積むというパッケージは妥当といえる。
まして、N-VAN e:のバッテリーは水冷式となっている。交換型バッテリーでは難しいレベルの温度管理をすることができるのだから、バッテリー性能を引き出すという点からも正しい選択といえるだろう。