国交省主導で路線バスの「完全キャッシュレス化」に道筋! 使いこなせれば便利だが「高齢者」や「利用頻度の低い人」はどうなる? (1/2ページ)

この記事をまとめると

■国交省は路線バスの運賃支払いをキャッシュレス決済のみにすることを認める方針を明らかにした

■キャッシュレス決済はバス事業者の業務効率を図るのための措置

■誰でも安価で手軽に利用できるという公共交通機関の使命だけは忘れないでほしい

日本でも公共交通機関にキャッシュレスが普及している

 報道によると、国交省(国土交通省)は路線バスの運賃支払いについて、キャッシュレス決済のみに限定して運行することを認める方針を明らかにしたとのこと。実現には国交省の標準運送約款の改正が必要となる。

 バス愛好家を自称する筆者は、海外出張に出かけると、訪れた街の路線バスに「乗りバス」して楽しむことがあるが、海外では交通系ICカードなどによりキャッシュレス決済のみが当たり前であり、現金収受を行っているのは、筆者の経験ではアメリカ(ロサンゼルスとラスベガス)ぐらいであった。

 アメリカで現金収受が残っていることへの考察は後述することとして、諸外国では治安がそれほどよくないこともあり、現金の取り扱いに慎重なこともキャッシュレス化を推し進めているのは間違いない。

 かれこれ10年ぐらい前になるかもしれないが、中国・北京市内で路線バスに乗ったら、基本的にICカード決済だったのだが、現金もOKということだった。そして、車内中央部に現金収受を担当する専門の女性がいたことには驚かされた。いまはキャッシュレスが当たり前の中国だが、現金払いが当たり前であったころには、食堂や商店に入っても、レジも含め現金を扱えるスタッフは責任者クラスに限定されていた(従業員が着服するケースも目立っていたようだ)。

 国交省の今回の判断は、働き手不足のなか、バス事業者の業務効率のための措置とのこと。ただ、昨今の政治の様子を見ていると、国民から強い要望も目立っていないのに、国交省が突然キャッシュレス決済のみとすることを認めると表明している状況をみると、「新たな利権創出か」と疑ってしまうのだが、それは考えすぎであってもらいたい。

 完全キャッシュレスではないものの、タクシーもキャッシュレス決済を積極的に導入している。クレジットカード決済がはじまったころは、場所によって電波状況が悪く決済できずに現金払いとなったこともあったが、いまやクレジットカードだけではなく、QRコード、交通系ICカード、配車アプリ決済などなど、多種多様なキャッシュレス決済が可能となっている。

 報道を見ていると、Suicaなどの交通系ICカード決済に統一すれば利便性が上がるとしているが、それは鉄道での移動をひんぱんに行う都市部の人間の発想ともいえる。鉄道が1時間や2時間に1本しか通らず、生活移動のほぼすべてを自家用車に頼る地方部では、鉄道事業者のICカードを持つ必要はない。生活において鉄道をほぼ利用しない人が多い地域では、イオンモールなどの大型ショッピングモールがあって広く利用されていることが多い。

 そうなると、交通系ICカードよりもたとえば近所にイオンモールがあれば「WAONカード」をもっている人が多いので、そのそばを通る路線バスはWAONカード決済端末を搭載していたりするそうだ。さらに、インバンド(訪日外国人観光客)を考えれば、「VISAタッチ」のようなグローバルなクレジットカードに対応させる必要もあるだろう(すでにVISAタッチ端末に切り替えている事業者もあるそうだ)。「QRコード決済にも対応してほしい」という声も出てくるだろう。

 現状でも乗車時(前払い方式)に交通系ICカードの残額不足でエラーが出て、その場でチャージする人も目だち、スムースな乗車ができないことが多い。また、コンビニやスーパーのレジなどでは、QRコード決済操作に手間取る人も目立つように筆者は感じている。スーパーなどのレジでは並んで待っていればいいが、これが路線バスとなると積もり積もれば運行遅延を助長するということにもなりかねない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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