目立つ高齢タクシー運転士の事故! だが年齢よりも「悟りを開けるか」がタクシーの安全性に大きく影響する (2/2ページ)

簡単な仕事じゃないからドライバー不足が解決しない

 とあるギャンブラー志向のある人からは、「パチンコやパチスロは、『生活のために』といったノリではなかなか勝つことはできない。あくまで勝ったときは『余禄』と考えて挑んだほうがいい」と聞いたことがある。似て非なる話ではあるが、タクシー乗務でも気持ちに余裕をもつことが安心・安全運行につながるのである。ベテランの運転士は配偶者が飲み屋などを営んでいたり、本人が副業を持っている人も多く、「タクシーは稼ぎより社会保険のため」として働いている層もいるようだ。

 隔日勤務ならば連続20時間(休憩あり)ほど乗務することになる。20時間クルマの運転、しかも見ず知らずの人を乗せて運転しなければならない。それだけとっても「誰でもできる簡単に稼げる仕事」とはいえないはずだ。むしろ、「誰でもできる簡単な仕事」ならば運転士不足もすぐに解消できるはずである。発想の転換ができないと稼げないことも多く、長続きしないことも多いのである。

 また、最近は少なくなっているようだが、昔はかたぎの経営側としっかり対峙する、組合のあるタクシー会社で組合運動を積極的に行うリーダー格となる武闘派運転士も事故や苦情が少ないとされている。経営者側と対峙している関係上、事故や苦情を起こせば最終的には離職につながりやすいリスクをはらんでいるので、「弱みを見せない」意味でも事故や苦情には細心の注意を払っているとのことであった。

 タクシーの最大にして唯一のサービスは「安心・安全に乗客を送り届ける」ことにある。そのほかのサービスはあくまでも付随的なものである。運転士の「ため口トーク」が問題になることもあるが、筆者はむしろ好意的に受け止めている。しかも日本だけの話ではなく、海外ではいきなり初対面なのに、「お前の年収はいくらだ」など、「えっ?」と思うことを聞かれることもある(筆者はため口トークや突っ込んだ話をしやすい人間と思われるようだ)。

 嫌がる人のほうが多いだろうが、筆者はそのような運転士との車内での会話を楽しんでいる(最近はスマホの翻訳アプリもあるので、どの国でも話が盛り上がることがある)。

 事故は誰でも起こしたくて起こしているわけではない。ただ、一般的なイメージとして、高齢者や少々怖いイメージのある運転士が事故を起こしやすい(運転が荒いと思いがち)と考えやすいが、見た目ではなく、タクシー運転士の仕事とはどんなものなのかを心底理解できるていうかできていないかで、わかれることも大きいのである。そのため、経験の浅い運転士でも、事故を起こさずバリバリ稼ぐ人もいれば、キャリアは長いが……、という運転士もいるのが実情だ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

-

愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

新着情報