日本でも売れそうなモデルを完成車輸入する国産車が増える?
しかし、インド製日系コンパクトクロスオーバーSUVにはさらなる伏兵がいた。その名は「日産マグナナイト」。ルノーの新興国向けコンパクトモデルの派生車ともいっていい存在で、このマグナナイトの最廉価モデルのインド国内での価格が59万9900ルピー(約112万円)というから、フロンクスより割安な価格設定となっている。
インド以外には、インドネシアでもインド生産モデルが輸入販売されており、筆者はインドネシアのオートショーでたびたびマグナナイトの実車を見ているのだが、けっして安っぽさの目立つモデルではない。計器盤はWR-Vやフロンクスがアナログメーターなのに対し、全面液晶ディスプレイを採用し、最上級グレードではJBLオーディオシステムが選べるなど、意外なほど充実している。ちなみに搭載エンジンは1リッターターボとなっている。
フロンクスやマグナナイトがインドから輸入され、日本で販売されるとすれば、「インド製コンパクトSUV三つ巴戦」といったことになり、自動車専門メディアも熱い視線を送ることになりそうである。
ちなみにWR-Vは全長が4mをオーバーしているが、フロンクスとマグナナイトは4m以内に収まっている。インドでは全長が4m以内に収まると税制上の優遇を受けられることもあり、量販クラスとなっている。WR-Vとほか2車で価格に大きな違いがあるのは、微妙に車格が異なることも大きいようだ。
マグナナイトは別としても、WR-Vが輸入販売され、フロンクスの国内導入が噂されるなど、インド製のコンパクトクロスオーバーSUVがなぜ注目されているのだろうか? WR-Vにはハイブリッドユニットはなく、フロンクスもマイルドハイブリッドのみと、日本ではストロングハイブリッドがないのではパンチが弱いようにも見える。
ホンダディーラーでは、「ウチもロッキーやライズのようなクルマが扱えたらなあと思っていました」という話を聞いたことがある。
直近ではダイハツのスキャンダルでしばらく生産停止や新規受注停止が続いていたライズ(ダイハツからのOEM車となる)だが、たとえば自販連(日本自動車販売協会連合会)統計による2022暦年(1月から12月)締め年間販売台数では8万3620台を販売し、登録車のみでの車名(通称名)別新車販売ランキングでは5位に入る人気モデルとなっている。
他メーカーでは直接競合するモデルもほぼなく、とにかくよく売れているモデルなのである。5ナンバーサイズのクロスオーバーSUVスタイルを採用し、現行型は1.2リッターと1.2リッターベースのシリーズ式ハイブリッドユニットをラインアップ(ハイブリッドは本稿執筆時点ではまだ新規受注停止中)している。2019年にデビューしているが、2021年の一部改良まではハイブリッド車の設定はなかったものの、それでもデビュー直後からよく売れていた。
つまり、「ロッキーやライズみたいなモデルが欲しい」というなか、トヨタ/ダイハツ以外のメーカーは、インドで生産されているサイズの小さい自社モデルに注目したようなのである。ロッキーやライズを見れば、いたずらにストロングハイブリッドを用意してコストアップになるよりは、ガソリンエンジンのみ(またはそれに近い)にして割安にしたほうが勝機ありとも考えているようである。
価格設定をみると、ライズのガソリン車の価格帯は171万7000~204万9000円となっており、WR-Vと比較するとライズをかなり意識したものとなっているように見える。トヨタ系ディーラーで話を聞くと、一部改良により1リッターから1.2リッターにエンジン排気量が変更になったのは残念だとの話をよく聞く。「とくに一部改良まではFFの1リッターターボに根強い人気があったようです(改良後は4WDのみに設定)。一部改良直前にはちょっとした駆け込み需要もあったようですよ」とは事情通。
フロンクスが仮に日本市場に導入され、しかも1リッターターボエンジンならば、いまどきCVTが当たり前のなか6速ATが組み合わされており、なかなか興味深いところでもあり、WR-Vやライズとは異なる個性で存在感を出せるかもしれない。
ライズみたいなコンセプトのモデルが日本市場でいま「おいしい存在」となっている。国内専売モデルを開発するよりは、世界市場で日本でも売れそうなモデルを完成車輸入して国内導入するという流れが今後も目立ってくるのかもしれない。