エンジン版と同様の使い勝手をEVでも提供するのがコンセプト
フロントグリルは、普通充電と急速充電の各ポートを納めるふたつのリッドが並んでいるが、その素材にバンパーを粉砕したリサイクル材を使っているのは特徴。バンパーのかけらをあえて意匠として取り込むことで、世界にひとつだけのグリルデザインとしているというエピソードもオーナー心をくすぐるポイントとなりそうだ。
インテリアについても、コンテナをモチーフとした形状のトリム(ドアやラゲッジ壁面)をN-VAN e:用に起こすなどしている。また、床下にバッテリーを積みつつ、荷物を最大限積めるようにひとり乗り・ふたり乗りのフロアパネルは専用設計になっているなど、随所にこだわりが詰め込まれている。
EVのスペックとしては、最大の注目ポイントといえるバッテリー総電力量と一充電航続距離は、それぞれ29.6kWh、245km(WLTCモード)となっている。約30kWhというバッテリー総電力量は、過去を振り返ると初代リーフの後期モデル並であり、軽商用車として競争力のある価格帯で、これほどのバッテリーを積んだことは、かなり意欲的といえる。
ただし、このバッテリー総電力量はオーバースペックを狙ったものではない。ヤマト運輸と共同で行った実証実験において、宅配業務にストレスのない使い方を追求した結果としての29.6kWhということだ。
このバッテリーは、ホンダとしては初のパウチセルタイプ(レトルト食品のような形状)のセルであり、水冷式とすることでバッテリーを冷やしたり暖めたりして性能を引き出すようになっている。これも、タフな使われ方をする商用車らしい設計思想といえよう。
最上級グレード以外は急速充電をオプションとしているが、じつは充電性能も高いスペックを誇る。普通充電はスタンダードな3.2kW充電に加えて、高速な6.0kW充電にも対応。電欠寸前といった状態からでも4時間半もあれば6.0kW普通充電で満充電まで回復できるという。CHAdeMO急速充電が50kWまで対応しているのも、軽自動車のEVとしてはハイスペックだ。
モーター性能についてもこだわりが感じられる。4人乗り仕様の最高出力は47kWとガソリンターボ同等で、最大トルクは162Nmとガソリンターボの1.5倍以上を誇る。しかしながら、「配達業務で使うにはパワーがあり過ぎても乗りづらい」という声に応えて、e: Gとe: L2の両グレードについては、最高出力を39kWに抑えている。
こうした作り込みを見ても、N-VAN e:がまったく新しい軽商用車として生み出されていることが感じられるのだ。