確かに休みは増えたけど……「働き方改革」に苦しむ新車ディーラーの現状 (2/2ページ)

働き方を変える前に労働環境全体の改革が必要だ

 定休日も働き手不足が深刻化してきているのも手伝い、週休2日のディーラーも出てきている。つまり、労働時間だけをみると、現状は以前よりはるかに改善されているのだが……。

 筆者はいまのような、販売現場の働き方改革が始まったころにベテランセールスマンに、「残業もできない、休みも多いなかで、いつ新車を売っているの?」と聞くと、「最初はどうしていいかわかりませんでした。いまは点検などで店を訪れる管理顧客のお客さまへ乗り換え促進することがメインになっています」と話してくれた。

 買う側もいまでは自宅、ましてや夜間にこられても困るし、日本でも治安上の問題も出てきており、そして非効率な売り方なのは明らか。休みが多くなり、帰宅時間が早くなることでの生活リズムの変化にも対応できるようになったのだが、給料がなかなか上がらないことに問題があるようだ。

 新車販売における値引き原資はディーラー利益を削るのが一般的。しかし、インフレが進むなか、物流経費や部材費高騰により新車の価格も値上げ傾向が目立っている。コストアップをすべて値上げで吸収するものとはなっていないので、値引きはかなり引き締まっているのが現状だ。さらに、セールスマン個々へ払われるセールスマージンも厳しく引き締められているようだ。

 もちろん、ディーラー個々で状況は異なるのだが、筆者が聞いた限りでは、単に新車を販売するだけではなく、ローン利用の有無などの細かな条件をクリアするなか、月々などで決められた粗利確保をクリアできないとマージンが一切払われないというものであった。つまり、「足切り」が設けられているのである。

 休みは多くなり、日々の勤務時間は短くなったものの、いわゆる「ノルマ」と呼ばれる販売目標台数の設定などは大きな変化を見せていないなかでマージン支給のルールが細分化して、支払われる額は少なくなってきているようで、収入の伸び悩みを見せている。これは話題の2024年問題に揺れるトラックやバス業界に似ているのかもしれない。

 世の中でいう「働き方改革」の特徴は自由な時間は増えるが、その分だけ収入は減ってしまうということになりがちなようである。トラックやバスは乗務回数、新車販売は販売台数という、ある意味「人事考課」があるし、それに対する手当も収入面では重要な存在となっているので、給与支給のシステムなど、労働環境全体の改革を進めなければ、単に勤務時間だけ減らせば歪みが出てくるのは当たり前といえば当たり前の話である。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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