市販車に近いパーティーレースとS耐マシンの「ロードスター」を徹底比較! なぜ富士スピードウェイで10秒も違うのか? (2/2ページ)

S耐マシンはレーシングカーそのもの!

・そのほかの速さの秘密

 ただ、先ほど紹介したリミッターとタイヤだけで、10秒という差がつくとは考えにくい。速さを得るためにはほかにも手が加えられているはずだ。ということで細部をより見ていくと、まだまだ違いがあることに気づく。

 まず、見てわかりやすいのがエアロパーツだ。S耐では運営に認められた市販部品のみ装着が可能となっている。レーシングカーの証でもあるGTウイングは、ほとんどの車両(ハッチバック系を除く)に取り付けられているが、フロントリップやバンパーは同じ車種でもチームによって異なる。65号車はオーデュラ製のフロントリップなどを装着するが、ほかのロードスターは純正アクセサリーのみにとどめている車両もある。なお、市販エアロパーツひとつあたりの上限金額(販売価格45万円以下)が決められているのもS耐ならではの面白いレギュレーションだ。

 エンジンもファインチューニングされているが、大幅な変更はない。エンジンのバランス取りを行い純正書き換えでECUを変更程度となる。吸排気系は大きな変更はできない。65号車は純正形状のエアクリーナーボックスにラムエアインテークを装着。排気系はエキゾーストマニホールドから後ろの変更が認められている。これで純正の約130馬力から160馬力前後にまで引き上げられているとのこと。

 足まわりの変更点は、ショックアブソーバーとブッシュ関係がメイン。ただ、ブッシュに関しては全体ではなく部分的に強化品に変えるチームもあるとのこと。このあたりはセットアップやチームの考え方で異なるだろう。また、LSDも機械式に変更とされている。

 ボディはスポット増しが施されていて、車内を見るとロールバーが組まれ、レースに不要な助手席など、余計なものが撤廃されている。なお、パワーウインドウは備わっていて、ユニットや操作系も純正のまま残されている。

 シートは基本的に市販のフルバケットシートへと変更。ここまでだとかなり軽そうに見えるが、同クラス内で性能均衡を保つため、ロードスターは1015㎏とS耐では最低重量が定められている。ロードスターカップの最低重量は1010㎏(パーティーレースは1085㎏)なので、数字を見るとノーマルから物凄く軽くなっている訳ではない。なお、ST-5クラスで戦うMAZDA2やフィット、ヤリスなどのFFハッチバック勢は1トンを切る数値が最低重量となっている。

 この最低重量による性能調整がS耐を面白くしている要素のひとつといえよう。ちなみに、GR86などに代表される、2.4リッターまでの車両がエントリーできるST-4に参戦する2リッターのロードスターRFは、最低重量が960㎏となっている。なんとST-5のロードスターより軽いのだ。なお、GR86の最低重量は1185㎏となっている。つまり、ライバルより排気量が小さいぶん、より軽い重量が認められているということになる。

・耐久レースならではのポイント

 耐久レースならではの強化ポイントもある。まずは冷却関係。エンジン、ミッション、デフなどにはオイルクーラーが装備されていて、レーシングスピードでの長時間走行にも耐えられるようになっている。オイルクーラー関係はパーティーレース仕様も含めて、通常のロードスターには装備されていない。また、耐久レースらしい装備としては燃料タンクが安全タンクに代わっているのもポイントだ。なお、搭載可能なタンク容量はクラスによって異なっていて、ST-5クラスの場合は45リットルとなる。

 ブレーキキャリパーは意外にもノーマル。ブレーキパッドやローター、ブレーキラインの変更のみで対応できるとのこと。より速いクラスになると車重があるため、ブレーキキャリパーの変更が車種によって特認されることもある。この特認が認められるか否かも性能調整のひとつのポイントといえる。

 そのほか、意外とノーマルな部分としてはトランスミッションが挙げられる。パワーとグリップが上がっているが、ミッションは基本的にノーマルだ。なお、特認でミッションが変わっているマシンもある。同じST-5クラスを戦う現行フィットは、MTミッションの設定がないため、MTへの換装が認められているのだ。また、3.5リッターまでの排気量で戦うST-3クラスでは、3.7リッターで特認を受けるZ34と3.5リッターのRC350の性能差を埋めるため、Z34は純正Hパターン、RC350はシーケンシャルミッションが認められていることもある。

 ロードスターに関して、特認という面でいえばハードトップだ。NDロードスターの市販パーツとして見ることのないハードトップだが、S耐では特認パーツとして認められている。

 このように見比べてみると意外とノーマルな部分もあるS耐マシン。もし、近くで見る機会があれば、市販車との違いを実際にチェックしてみると面白いかもしれない。


西川昇吾 NISHIKAWA SHOGO

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愛車
マツダ・ロードスター(NB8C後期型)/ボルボV40 T4
趣味
スポーツ走行、写真撮影、ネットラジオ鑑賞
好きな有名人
織田裕二、駒形友梨

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