誰もが安心してサーキットを走れるクルマ
早速タイムアタックに入る。第一コーナーはややアンダーステアが強く、操舵角が増している。これはアシンメトリックLSDが減速時に拘束力が強く設定されていることがリヤの安定性を高めていることによる。立ち上がりでスロットルを開くとトラクションが適度にかかり、テールスライドも少ない。これもLSD効果で加速方向では拘束力が弱く設定されているからだ。これは通常のレース用LSDとはまったく逆の考えで、リヤの荷重が小さく、後輪駆動のロードスターならではのセットアップといえるだろう。
第一ヘアピン、ダンロップコーナー、第二ヘアピンと同様な特性を示すが、第二ヘアピンへ向かう高速左コーナーではパワーバンドに乗りパワースライド傾向が強まった。
バックストレートではステアリングセンターがしっかり出ていて保舵力も増していて安心感が感じられる。また高速100Rの最終コーナーではアンダーステアに終始し、フロントタイヤにはやや厳しい状態になっている。
これらはもちろん電子制御をオフにしての走行フィールだ。
次に新採用のDSC-TRACKモードを試す。スライドをある程度許容し、アンダーステアやオーバーステアを感じられるが、カウンターステアを当てるほどにヨーが高まると弱く介入が入る。一般的なドライバーにとっては十分実用的で安心安全な装備といえるのだが、今回のようなウエット路面ではややミスマッチな場面もある。
とくにウエットパッチとハーフドライ路面が混在する路面状況だとウエット部で制御が介入し、作動時にはタイヤがドライ路面に乗っているような状況では減速感を強く伴いコンペティティブとはいえない。おそらくノーマルタイヤとブレーキではマッチングがいいのかもしれないが、レース用アドレナリンとエンドレス製ブレーキパッドの組み合わせで難しい路面コンディションに対してはもう少しキャリブレーションマッチングしたほうがよさそうだ。
ちなみにラップタイムはDSCオフ時に1分19秒55。DSC-TRACKモードでは1分20秒44がベストタイムだった。昨年のメディア4耐予選時はより難しい路面コンディションで1分19秒37を記録。速いチームは1分17秒台を出せていたので、新型が圧倒的に有利ということではなさそうだ。
いずれにしても、サーキット走行に対する適合性が高まっていることは間違いなく、スポーツ走行でトレーニングし、またレースに参加するなどビギナー、ベテランを問わず安心してサーキット走行に臨めるロードスターの存在は改めて意義深く、世界中のファンを魅了する原動力になっているのは間違いない。
今年も開催されるメディア対抗ロードスター4時間耐久レース。今回の改良を受け参加車両は全車新型に入れ替わるという。今回の試乗で得たノウハウを活かし、今年こそは悲願の優勝を果たしたいと願っている。