新型スイフトの登場がそのほかのコンパクトモデルの質感を上げる
とはいっても大排気量エンジンを搭載する、ボディサイズも大きい、いかにも高級車といったモデルではない。日本でもお馴染みのバレーノやイグニスを見てもわかるとおり、マルチスズキアリーナ店扱いのモデルと大きさはたいして変わらないのである。
インドではボディサイズこそコンパクトクラスだが、高級イメージをもたせた「プレミアムコンパクト」と呼ぶにふさわしいクラスが存在するのである。BMWミニや、フィアット500eなど、欧州コンパクト車の一部もプレミアムコンパクトと呼ばれることもあるが、それとは少々異なるような印象を筆者はもっている。
インドではそもそも富裕層でもコンパクトカーに乗り続けることが多い。その訳を現地で聞くと、「デリーは道が狭いところも多いから、そんなにデカいクルマには乗ることはできない」との話を聞いたこともある。
また、伝統的には富裕層だからといって、あからさまに見栄を張ったようなクルマには乗らない傾向が強いようである。ただ、グローバル経済が叫ばれるようになり、欧米の流儀が世の中に浸透してくると、レンジローバーやメルセデス・ベンツ、BMWといった欧州プレミアムブランドモデルに乗る富裕層も目立ってきたそうだ。ある現地人は「欧米に影響を受けた人はあのような(欧州などの大きい高級車)クルマに乗りたがる」と教えてくれた。
コンパクトモデルでも相応の質感を持たせるのは日本車の得意分野。階級社会の染みついた欧州ブランドではなかなかマネできない芸当ともいえよう。ただ、韓国ブランドは新興国向けコンパクトSUVとなる「クレタ」をはじめ、スズキのネクサ店で扱うモデルにぶつけるようなプレミアムコンパクトモデルをインドでラインアップしている。
日系ブランドではスズキが圧倒的な販売シェアを誇るなか、街なかではトヨタやホンダのクルマをよく見かける。トヨタはアルファードやカムリ、レクサスブランド車など、明らかにスズキが幅を利かすクラスとはまったく別のクラスで各モデルがよく売れている。そのため「販売台数ではスズキが圧倒的に多いが、台当たり利益で見ればトヨタが圧倒的にいいように見える」といった話も現地で聞くことができる。日本メーカー同士でぶつかることなく、棲み分けができているといってもいいだろう。
新型スイフトは見た目だけではなく、走りなど基本性能もだいぶ向上している。その新型がインドでもデビューしたということは、スズキのプレミアムコンパクトモデルも今後のモデルチェンジなどを経て、さらに性能や見た目の質感が向上していくことは間違いないだろう。