F3王者でF3000優勝経験もある中谷明彦が30年ぶりにフォーミュラを体験! マシンの進化の凄まじさをまざまざと見せつけられた (2/2ページ)

フォーミュラカー30年の進化は?

 ただ僕はパドルシフトを試したいので1〜4速までを使わせて走っていた。Hパターンでは走行中に1速を使うことはまずあり得ない。1速はスタート専用ギヤ比で低速コーナーでもマッチしないからだ。たとえ使えたとしてもHパターンで走行中に1速へ落とすのは難しく、難儀したものだ。

 それがパドルシフトではまったくスムースに1速へ落とせる。シフトアップも変速スピードが早くレスポンスがいい。まるでF1のシミュレーターゲームを操作しているような気分だ。

 Hパターンシフトで手の皮が剥け痛い思いをしながら走っていた当時の苦労が嘘のようで、この30年でもっとも進化した部分といえるだろう。パドルシフトで両手は常にステアリング上に置かれ、ステアリング操作に集中できる。パドルシフトをエンジョイしていると10分間はあっという間に過ぎてしまった。

 とはいえマシンを降りると心地よい疲労感が腕と首に残っている。エクスペリエンス・コースはこれで終了だが、アドバンス・コースはさらに2本、計3回の走行となり、体力もそこそこ必要になるだろう。

 今年67歳になる僕にとっては1本で十分だったが、パドルの楽しさを知ったら本コースでも走りたくなった。

 たとえば若い頃は実現できなかったフォーミュラカーという本格的なレーシングカーに乗るという夢を還暦すぎて楽しむのもTFCでは歓迎してくれる。今回、F1解説で知られるレーシングカーメカニックの津川哲夫さんも、やはりパドルシフトのフォーミュラカーに乗ってみたいという僕と同じ理由で参加されていて、聞けば御歳75歳だという。

 レーシングスーツを着込んでフルフェイスヘルメットとハンスを装着。トムスのメカニックのサポートでマシンに乗り込めるのはプロドライバーと同等の体制だ。こんな高待遇をわずか8.8万円で体験させてくれるTFCは素晴らしいと思う。F4マシンを新車で買えば約1300万円かかるわけで、対してエクスペリエンス・コースは8.8万円でタイヤやブレーキといった消耗品に複数のメカニック、走行場所の確保、運営などすべて含まれる。アドバンス・コースの27.5万円でも安いくらいだろう。

 若手育成が基本だが、50歳以上の高齢ドライバーにも夢を与えてくれるという意味で、TFCには大きな価値がある。

 ちなみに終了式ではブロンズ、シルバー、ゴールドと3種類ある成績証明カードのゴールドを授与していただきアドバンス・コースへの参加資格を得られた。

 こうなったら本コースをパドルシフト車で走るチャンスを本気で探してみようという気もちにさせてくれたのだった。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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