この記事をまとめると
■免許取得時にAT限定を選ぶ人は全体の70%近くにも及ぶ
■ひと口にATと言ってもさまざまな種類が存在する
■ATの世界で主要な構造のメリット・デメリットを解説する
今やオートマ車しか乗らない人がほとんど!
新規に自動車の運転免許を取得しようとするときに、「オートマ限定にするかしないか」で迷うこともあるかもしれないが、現実的にはオートマ限定で運転免許を取得するのが主流だ。警察庁の運転免許統計によると、令和5年に新規で第一種普通免許を取得した人は116万4801名で、そのうち78万9713名がオートマ限定だった。約7割は「ひとまずオートマのクルマにしか乗らない」と考えているといえる。
オートマ(AT:オートマチックトランスミッション)に限定されない運転免許の保持者からは「MT(マニュアルトランスミッション)だからこそスポーツドライビングの醍醐味が楽しめる」といった声も上がりそうだが、クラッチ操作ができることは、ある意味オワコン化しているというのが現実だ。そもそもMTについては、乗用車では4~7速くらいまで変速段数の違いはあっても、異なる変速比をもつギヤの組み合わせとクラッチ板といった基本メカニズムは共通だ。
しかしながら、オートマについては根本的な構造が異なるさまざまなメカニズムが存在しており、それぞれに異なる特性を有している。つまり、オートマ車選びにおいて走りのパフォーマンスを気にするのであれば、エンジンやフットワーク性能だけでなく、オートマによるキャラの違いも把握しておく必要があるのだ。
こう記すと「軽自動車はCVTが主流、欧州車にDCTが多いことくらい知っているよ」という声もあるかもしれない。しかし、オートマの本質を知るには変速機構とクラッチ機構をわけて捉える必要がある。
たとえば、昔からあるタイプのオートマについて「トルコンAT」といういい方をすることも多いが、「トルコン」というのはトルクコンバーターの略称で主にクラッチ機構のこと(変速機構として利用した時代もあった)。変速機構については遊星歯車(プラネタリギヤ)を単独もしくは複数用いた構造となっている。こうした遊星歯車を使ったオートマ機構だけを示すのであれば「ステップAT」という用語のほうが適切といえるかもしれない。
実際、マツダCX-60/CX-80(未販売)などの縦置きエンジンに組み合わされる8速オートマの変速機構は、遊星歯車のステップATながら、クラッチ部分を湿式多版タイプとしている。遊星歯車式オートマであればトルコンATということでもないのだ。