月販わずか130台ってアルヴェルの2%だぞ! このご時世にハイブリッドもなし! それでも日産エルグランドが新型を出さずに売り続けられるワケ (2/2ページ)

ユーザーを逃さないためにもエルグランドを廃止できない

 その点で、エルグランドにはデリカD:5ほどユーザーから注目される強い個性がない。加えて目立った改良も受けていない。エルグランドのパワーユニットは、直列4気筒2.5リッターとV型6気筒3.5リッターのガソリンのみだ。いまの売れ筋ミニバンには必ずハイブリッドがあり、前述のデリカD:5も、ハイブリッドがない代わりにクリーンディーゼルターボを搭載する。エルグランドはV6エンジンを用意するが、ほかのミニバンに比べると、購入に結び付く魅力に乏しい。

 そして、商用車や悪路向けのSUVを除くと、デリカD:5のような大幅な改良を実施しない限り、ひとつのモデルを作り続けられる限界は約10年だ。

 たとえば現行エルグランドを発売した2010年に購入したユーザーが、5年後の2015年に改良型に乗り替えたとする。しかし2020年以降に、さらにもう一度同じエルグランドに乗ってもらうのは難しい。

 このような事情もあり、2010年に登場した最終型ヴィッツは、2020年に現行ヤリスへフルモデルチェンジされた。2011年に登場した初代アクアも、2021年に現行型の2代目アクアに切り替わった。

 それならなぜエルグランドは発売から10年以上を経過しても販売を続けているのか。その理由は、まずエルグランドの価格帯が400万〜600万円に達しており、いまの日産では貴重な高価格車になっているからだ。エルグランドが1カ月平均で約130台でも販売されると、メーカーや販売会社にとってはプラスになる。

 販売会社では「エルグランドは新型にフルモデルチェンジして欲しいが、廃止されるのは一番困る」という。廃止されるとユーザーがエルグランドに見切りを付け、アルファードやヴェルファイアに乗り替えてしまう。そうなると車検、点検、保険といった付帯サービスの受注まで失うからだ。

 また、エルグランドのユーザーがたとえばセカンドカーとして日産ノートを併用している場合、エルグランドがアルファードに乗り替えられると、トヨタのセールススタッフが熱心なら、ノートまでヤリスに切り替わる心配がある。ユーザーを逃さないためにも、エルグランドは廃止できない。

 そして直近のジャパンモビリティショーには、日産がLサイズミニバンを思わせるハイパーツアラーを出展した。近年では海外でもLサイズミニバンが販売されるようになり、日産がエルグランドの後継車種を企画しているとも受け取られる。そうなるとユーザーを繋ぎ止める意味でも、ますますエルグランドは廃止できないわけだ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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